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韓国の教育虐待を描くドラマ「SKYキャッスル」に見る存在証明としての学歴

光文社新書の永林です。今週は、国立大学の合格発表がありましたね。トップ大学に合格した子どもたちの中には、小学生、あるいは就学前から猛勉強をしていた生徒も多くいることでしょう。親は、子どもたちによりよい未来を歩んでほしい一心で、勉強をさせるものですよね。しかし、「教育熱心にやっていても、子どもの受忍限度(耐えられる限界)を越えたら、教育虐待」と言われているのをご存じでしょうか。治部れんげさんの連載「ジェンダーで見るヒットドラマ」第11回は、そんな教育虐待に走る韓国の教育ママ・パパたちを描いたドラマ「SKYキャッスル」を取り上げます。

前回までの記事はこちら↓ 6月発売の光文社新書「ジェンダーで見るヒットドラマ」の原稿を先行公開しています! 

※書籍発売以降、有料記事となりました。後半は書籍か、記事をご購入いただいてお楽しみください。

「自分の人生を生きられない親」による教育虐待

韓国ドラマを見始めて1年になります。すぐに気づいたのは、俳優たちが高学歴であることでした。「愛の不時着」主演のヒョンビン、ソン・イェジン、「私の名前はキム・サムスン」主演のキム・ソナ、「ミスティ」主演のキム・ナムジュなどはいずれも、韓国の大学で映画や演劇を専攻しています。理論を学んでいるから演技も上手なのかな?と感心していたら、芸能界に詳しい友人が「韓国は学歴社会だから」と教えてくれました。

「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」は、韓国の極端な学歴重視社会を風刺する秀逸なドラマです。タイトルはドラマの舞台になるソウル郊外の高級住宅地の名称からきています。南欧のお城のような豪邸が立ち並び、一般の住宅地とは隔絶されたコミュニティで、住民だけが使える豪華な図書館やパーティールームもあります。中心となる登場人物は、複数の医師とその家族、ロースクール教授とその家族です。

ドラマは、この高級住宅地に住む家族の異常な教育熱を描きます。まず、息子を医者にするべく猛勉強させていた医師一家、パク家の場合です。

息子と恋愛関係になった若い家政婦を、勉強の邪魔になるからと両親が追い出してしまいます。家政婦の娘を「虫けら」と呼ぶ父親に、息子が怒りをぶつけます。「学のない貧乏人は虫けらなのか? 学歴で差別するあんたらが虫けらだ」。すると、医師である父親は、医学部を目指す息子にこう言い放ちます。「実力がなくて(医学部に)行けないか。親戚中が出た大学なのに。クズが生まれやがって。戸籍から抜くぞ」。

階級差のある恋愛は韓国ドラマの定番ですが、相手を「虫けら」と呼び、学歴差別した挙句に息子を「クズ」呼ばわりするのは親としてはもちろん、人間として失格でしょう。実際、この家庭では、息子が医学部に合格した直後、両親と縁を切ることを宣言し、家庭が崩壊します。母親は猟銃自殺し、父親は勤務先の病院を辞めてSKYキャッスルから去り、山小屋にこもります。

パク家は最も悲惨なケースですが、登場人物の多くは教育虐待に走り、その家族は苦しみます。子どもの将来を案じるのは多くの親に共通することです。教育熱心であることと、教育虐待の線引きについて、臨床心理士で広島大学教育ヴィジョン研究センター諮問委員の武田信子さんは、子どもの受忍限度を超えているかどうかを目安にすべきと言います。顔色や寝起きの悪さ、隠し事、他人に意地悪をする、物に八つ当たりをする等の例を挙げた上で、他人が基準を決められることではないため、子ども自身に尋ねてみることを勧めています。つまり、子どもの自己決定権の尊重が欠かせないということです。

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