青唐辛子ラブ|パリッコの「つつまし酒」#234
生でも醤油漬けでも
夏まっさかり! ということで、青唐辛子の旬ですね。僕、大好きなんですよね。青唐辛子。
真っ赤に熟した赤唐辛子よりは辛さが控えめだと言われている、フレッシュな辛味。つっても、本当に? ってくらい辛いときが多い気がするんですけど、あれがやめられない。酒場に行って、青唐辛子もののメニューがあると必ず頼んでしまいます。特に好きなのが、青唐辛子入りの玉子焼き。
塩気の利いたまろやかな玉子に、しゃきしゃき食感の青唐辛子がたっぷり。奥歯で噛み潰した刹那、パキーン! と広がる鮮烈な辛味。その余韻のなかでぐいーっと飲むプレーンチューハイ。いいよなぁ、夏って感じで。
醤油漬けもまたいいですよね。写真は横浜のとある酒場で出会った、熱々の厚揚げに自家製の青唐辛子醤油漬けをのせたメニュー。こんなもん、ある意味究極でしょう。うまかったなぁ……。
我が家でも当然、青唐辛子の醤油漬けを作るのは恒例行事。清潔に消毒した瓶に、刻んだ青唐辛子と醤油を入れておけばいいだけなんであまりにも簡単です。旬の季節に大量に作ってしまえば年中楽しめる。
冷奴、納豆、焼肉、うどん、はたまた、刺身にだってあり。ちょいとスプーン1杯ぶん加えてやるだけで、ピリリとした刺激の加わったワンランク上のおつまみに早変わり。
ちなみに上の写真は、昨年妻が仕込んでくれた醤油漬けを使ったもの。今年は僕の思いつきで、大きめのバットに刻まずそのままの青唐辛子を入れ、そこに醤油を注いだダイナミックバージョンを作ってみました。
結果からご報告すると、醤油がやたらと必要だし、冷蔵庫のなかで場所はとるし、素直に刻んで漬けたほうがいいと思われます。ただ、容器から1本出してきて、晩酌の合間にちびちびそのままつまむのは、なかなかいい。ご興味のある方は一度、やってみてもいいかもしれません。
いろいろな料理に
さて先日、地元の八百屋さんでお得にもほどがある青唐辛子を見つけ、買ってきました。
今回はこれをあれこれ調理し、青唐三昧の家飲みを楽しんでやろうというのが趣旨でございます。
まずはやっぱり、青唐辛子入りの玉子焼き! 玉子3個に対し、3本ぶんの立派な青唐辛子をざっくりと刻み、炒めていきます。
青唐辛子の香りが立ってきたら、白だし適量を加えてよ〜く溶いた玉子を投入し、手早く混ぜつつ、固まりすぎる前にお皿へ。
これがねぇ。正直に言ってしまえば、やりすぎました。僕、辛いものがだいぶ好きなんですよ。だけど、TVに出ているような激辛マニアさんほどではない。けどこれは、もはやそっちの領域に足を踏み入れている。青唐辛子の個体差にもよるんでしょうけどね。
まず、玉子自体が青唐辛子の持ち味をぞんぶんに吸って、それだけで食べても激辛。しかしまぁ、いけなくはない。けれども、ざっくざくの青唐辛子が口のなかへ入ってくると、これはもう異常事態。辛いっていうか、痛い。そもそも、辛味って痛覚らしいですからね。しかもなんだろう、赤唐辛子ともまた違った、鼻に抜けるような、油断してると咳きこんでしまうような、まさに青っぽさのある、独特の辛味なんですよね。これがきついんだけど、ひーひー言いながら食べて、少し落ち着くとまた食べたくなってしまう。もう、バカなんですよね、僕。
続いてもうひと品。定番の家庭料理に「野菜の肉巻き」ってありますよね。あれを青唐辛子で作ってみようと思うんです。しかも、今年僕の漬けた、輪切りにしてない醤油漬けと生の2バージョン。
これまた強烈だ〜。まず、醤油漬けのほうは多少マシ。たぶん、辛味成分が醤油のほうにだいぶ溶け出しているからでしょう。ぎりぎり耐えられる辛さと、豚の脂身効果によって、いいビールのつまみになります。
一方、生のほうは容赦なし。先端をちびりとかじっただけですさまじい辛味が口のなかをまんべんなく襲い、数分間逃げ場なし状態です。
こうなってくると、その合間に飲むビールやチューハイすら、炭酸の刺激が痛く感じてくるんだよな。インドカレーとともにラッシーを飲む文化、まことに理にかなっていると実感できます。
それでもなんとか、ちびちびちびちび、時間をかけて完食。なら食べなきゃいいのにって話はごもっともなんですが、けどこの辛さ、どこかに快感があることも確かなんだよな〜。
シン・青椒肉絲
続いて、WEBで青唐辛子のレシピを検索していて見つけた「青唐辛子みそ」。これはどう考えたって酒のつまみにいいでしょう。
レシピはまぁ目分量で、刻んだたっぷりの青唐辛子をごま油で炒め、酒、みそ、砂糖を加えて、いい感じのとろみになったらあら熱をとって完成。
これがまた! これがまた! ばっちりなんですよ。辛いは辛い。けれども、みそのコクと甘みとまったり具合が絶妙で、ちょんと箸でつまんで舐めるだけでいくらでも酒が飲める。くぅ〜、辛れぇ〜……なんて言いながら、エンドレスに。これ、冷奴やごはんにのせてもいいでしょうねぇ。
さてラストは、ここにきて懲りもせず、思いっきり青唐辛子がメインの思いつきメニューを作ってみましょう。ずばり、ピーマンを青唐辛子に入れ替えた青椒肉絲。
「青椒」とは、品種改良して辛味を抜いた唐辛子を指し、「肉絲」とは細切りの肉ことを指すようです。つまり、辛味のある青唐辛子を使うこの料理は、え〜と、う〜ん、うまい表現が思いつかないけど、「シン・青椒肉絲」と呼んでもいいのかもしれません。
今までの反省をもとに、特に辛味が強いというワタや種を取り除いて、細切りにし、レッツクッキング。
細切りの豚肉には片栗粉をまぶしておいて、味つけはだし醤油とオイスターソースを目分量で加えただけのざっくり料理ですが、これが抜群! 辛いものが大丈夫な方にはぜひ一度作ってみてほしいくらいのおすすめ料理にしあがりました。よく冷えたビールとの相性が完璧〜。
とはいえ、食べていると当然辛味は蓄積してきます。結果、最終的にお皿の上には青唐辛子だけが残ってしまうことになったんですが。
ただですね、この、豚の旨味と油と甘辛い味をよくまとった細切りの青唐辛子が、いいつまみになるんです。ちびちびと1本ずつ口へ運んではお酒をぐいっ。ピーマンではなく、青唐辛子で作った青椒肉絲ならではのお楽しみと言えるでしょう。