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「口から食べなくても、入れ歯をしたほうがいい」驚きの理由


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訪問歯科医の五島朋幸氏は、1997年に歯科の訪問診療を開始してから、口腔ケアについて気づいた大切なことがたくさんあるといいます。歯の治療や口腔ケア、そして「食べること」と生きることの関係について、間違った思い込みから脱し、今日からできる正しい方法をお伝えします。


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歯がまったくない人と、誤嚥性肺炎の関係

先日、「誤嚥性肺炎は寝ている間の唾液の誤嚥が主な原因であり、それを防ぐには寝る前に口の細菌を減らすことが大事」とお伝えしました(誤嚥性肺炎の原因は、飲食ではなかった)。

では、歯がまったくなければ、細菌の繁殖は抑えられるのでしょうか?

口から食べなければ歯は使わないわけですし、いっそ全部抜いてしまった方が、口腔環境はよくなるのでしょうか。

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確かに、歯がなければ、細菌の数は減るかもしれません。虫歯菌や歯周病菌は、歯や歯の周りにいるからです。

しかし、その代わりに、飲み込む機能が低下します。

私たちが何かを飲み込むとは、精妙な反射運動の連続ですが、その発端が歯と歯を噛み合わせることだからです。


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どういうことでしょうか。

少し丁寧に説明します。

ものを飲み込むとき、私たちはまず口を閉じ、奥歯を軽く噛み合わせて、顎(あご)を固定します。

試しに意識しながら水を飲んでいただくと、この動きがよくわかります。

次に「軟口蓋」という上顎の奥の柔らかいところがせり上がって、鼻から口につながる通路を塞(ふさ)ぎます。

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こうして口の中が密閉状態になったところで、舌が上顎に向かって上がり、口の中の圧力を高めて、食塊(しょっかい)を喉へと送ります。

このとき舌の動きに連動して一瞬早く、「嚥下反射(えんげはんしゃ)」と呼ばれる反射運動が起こります。舌の下にある「舌骨(ぜっこつ)」という骨が前上方に上がり、それに伴って気管の上部にある「喉頭」という器官も上がり、気管に蓋(ふた)がされ、食道が開くのです。


歯がまったくないと、誤嚥が増える


つまり、ものを飲み込む際には、まずは歯と歯が噛み合うことで顎が固定されることが必要なのです。

歯がまったくないと、この一連の動きがうまくいかず、誤嚥が増えます。

歯がなくても細菌はゼロではありませんし、口から食べなくても唾液がまったく出ないわけでもありませんから、飲み込みの機能が低下すれば、誤嚥性肺炎を発症する確率は高くなるのです。

ということは、口から食べなくても、歯がない人は入れ歯を入れるなどして、噛み合わせを確保する必要があるということ。そうすることで、誤嚥を減らすことができます。

口から食べないから入れ歯は必要ない、ということではないのです。

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ただし私としては、少しでも嚥下反射が残っていて、本人に食べたい気持ちがあるならば、「口から食べない人」を「口から食べる人」に戻す努力をするべきだと思っています。

口から食べないから口腔ケアをしっかりするのではなく、再び口から食べるために口腔ケアをしっかりする。

同じ口腔ケアをするにしても、そう思った方が気持ちが前向きになりますよね。

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以上、五島朋幸著『死ぬまで噛んで食べる――誤嚥性肺炎を防ぐ12の鉄則の第1章、第2章より抜粋してご紹介いたしました。

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五島朋幸(ごとうともゆき)
1965年広島県生まれ。日本歯科大学卒業。博士(歯学)。歯科医師、ふれあい歯科ごとう代表。新宿食支援研究会代表。株式会社WinWin代表取締役。日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科臨床准教授。東京医科歯科大学、慶応大学非常勤講師。1997年より訪問歯科診療に積極的に取り組み、2003年ふれあい歯科ごとうを開設。地域ケアを自身のテーマとし、クリニックを拠点にさまざまな試みを行い、理想のケアのかたちを追求している。
2003年よりラジオ番組『ドクターごとうの熱血訪問クリニック』パーソナリティーも務める。著書に『愛は自転車に乗って』『訪問歯科ドクターごとう①』(以上、大隅書店)、共著に『口腔ケア〇と×』(中央法規出版)、『食べること生きること』(監修、北隆館)など多数。

光文社新書『死ぬまで噛んで食べる――誤嚥性肺炎を防ぐ12の鉄則』(五島朋幸著)は、全国の書店、オンライン書店で発売中です。

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