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夢のかぶら屋ラーメン|パリッコの「つつまし酒」#229

酒場ライター業の原点

 物心、いや、酒心ついて以来、それはもう長いこと、酒好きをやらせてもらっております。当初は酔っぱらって友達とわいわい騒ぐことが純粋に楽しかったのが、やがて少しずつ酒場自体の良さ、おもしろさに気づきだし、どんどんとのめり込むようになり、気づけば酒場ライターなどという存在になってしまった昨今です。
 若いころからものづくりや、なにかを発信することは好きだったので、少しずつブログ的なものに酒場の記録を書くようになりました。やがて初めて人から頼まれ、記事を書くようになったのが「大衆酒場ベスト 1000」という連載。2009年に公開されたその第1回目に取り上げたお店が「かぶら屋」でした。
 有名チェーン店なのでごぞんじの方も多いと思います。2024年6月現在、公式サイトで店舗数を数えてみたら、60店舗ありました。ちなみに2009年の記事公開時で22店舗だった模様。
 ところが、僕がかぶら屋を気に入り、通いはじめた20数年前は、池袋に1号店と2号店があるだけの、とってもローカルなお店だったんですよね。だからこそ、僕はいまだにかぶら屋には並並ならぬ思い入れがあります。出かけた先の街で見かけたりすると、「お、がんばってんね」なんて嬉しくなってしまう。僕の住む石神井公園にも店舗があって、当然大好きです。

お気に入りメニューあれこれ

 先日も、練馬の街をうろうろしていたら、かぶら屋を発見しました。

「かぶら屋 練馬店」

 午前11時半から夜11時までの通し営業店。昼飲み大好きっ子の僕としては、ついふらふらと吸い寄せられずにはいられません。

1分後

 というわけで、こういう状態に。しかもここ、嬉しいことにホッピーがあるかぶら屋でした。店舗ごとに、あるとことないとこがあるんですよね。
 それでは今から、僕の数あるかぶら屋お気に入りメニューの一部をご紹介していきましょう。まずはやっぱりこれ!

「赤ウィンナーフライ」(税込み165円)

 先述の大衆酒場ベスト 1000でもメインで取り上げた、僕の永遠のナンバーワン。赤ウインナーの串揚げが、ウスターソースにどぼっと浸してあって、ウインナーのジャンク感と甘み、ソースの酸味、サクッとした衣の香ばしさのバランスが、現実離れの調和をしているんです。
 ちなみに、写真奥はこれまた外せない、野菜串揚げの「じゃがバター」(132円)。
 続いて串焼き。かつては驚きのほぼ80円均一で、現在は串によっては値上げされたものもあるものの、「シロ」「ハツ」「とりレバー」の3種はお値段すえおき。

「シロ」「ハツ」「とりレバー」(各88円)

 この値段にして、それぞれにしっかりとしたサイズ。肉はどれも新鮮そのもの。また、かぶら屋は、たれがいいんですよね。甘めで、ミステリアスな深みがあって。
 さらに、かぶら屋の3本柱といえば、串焼き、串揚げ、そして「黒おでん」。これがまた、さっと出てきていいつまみになるんですよね〜。僕のおでん2トップがこちら。

「じゃがいも」(165円)

 そしてそして!

「牛すじ」(198円)

 じゃがいもはまぁ、好物なのでね。よくだしの染み込んだほくほくのいもに、だし粉のかかった「しぞーかおでん」スタイル。そりゃあうまいですよ。
 特筆すべきは、牛すじ。これ、ほんとにすごい。味がよ〜く染み込んでとろっとろになった牛すじが小皿にたっぷりで、もはや一品料理。かぶら屋に来て、着席と同時にこいつを頼まなかったことはないかもしれません。

パリッコスペシャル

 ところでここ練馬店、かぶら屋のなかでもちょっと珍しい店舗になっておりました。なんと「豚骨ラーメン提供店」だそうなんです。

豚骨ラーメン!?

 入り口にでかい看板があったので、入る前から気にはなっていました。あわよくば、シメに食べてやろうと。けれども、上記のようにひとりで好き放題飲み食いしたら、とてもラーメンまでは入りませんでした。
 しかし気になるなぁ、かぶら屋のラーメン。となれば後日、あらためて、ラーメンに照準を合わせて再訪するしかないっ!

来た

 ご覧のように、このあとラーメンの予定がある以上、つまみは最小限に「浅漬け」(308円)のみからスタート。こいつをぽりぽりとつまみつつ、あらためてラーメンメニューを確認してみましょう。

ふむふむ

 基本の「豚骨ラーメン」が638円はかなりリーズナブルですね。加えて4種類のバリエーションと、豊富なトッピング。こいつは迷うな……。
 ただ、ここでふと、ひとつのアイデアが脳裏をよぎります。考えてみれば、ここはかぶら屋。このラーメンのメニュー以外にも、料理はいくらでもある。

このように

 となれば、ラーメンメニュー記載のトッピング項目という「枠」から自由になれば、かぶら屋にあるすべてのメニューを「トッピング」と考えられるんじゃないだろうか?
 たとえばですよ。トッピングからならば、個人的には「煮玉子」を選びがち。けれどもここでは、串焼きの「うずら玉子」を選んだっていいわけだ。そりゃあ、間違いなく合うことが約束されているのは煮玉子でしょうよ。けれども、夢、ロマンがあるじゃないですか。あえてうずら串を合わせるという行為には。かぶら屋ファン的に。
 同様に、ラーメンメニューに「にんにく増し」の選択肢はないけれど、串焼きには「にんにく」がある。
 よし、組み立てよう! 自分だけの、夢のかぶら屋ラーメンを!

「豚骨ラーメン」

 やがて到着したのが、基本の「豚骨ラーメン」。写真は、卓上のフリー紅しょうがをのせた状態。まずはそのまま少し味見してみましょう。

スープに

 強いクセやくさみなどは皆無な、あっさりタイプのとんこつスープ。しかしながら、しっかりととんこつの旨味が感じられ、適度な脂っこさもあってちゃんと美味しいです。とんこつラーメンらしい細めのストレート麺もいい。でっかいチャーシューが2枚ものって、これ、職場が近くだったりしたら、頻繁にラーメン屋として利用しちゃいますよ。
 さて、では本番。ここに、僕セレクトのフリートッピングを加えていきましょう。

「うずら玉子」(165円)、「にんにく」(143円)

 先述の串焼き2本ですね。
 加えて、さらにもう1品。なにを選んだと思います? ここから先はちょっと冒険の領域になりますが、僕の大好きなおでんの牛すじ。いってみちゃおうかと思うんですよね。
 というわけで、その3トッピングをのせたラーメンがこちら!

「かぶら屋ラーメン パリッコスペシャル」

 う〜む、急に迫力が3倍くらい増したな。特に牛すじの存在感がすごい。奥のうずらとにんにくもいい味出してる。よし、いただきます!
 と、あとはおかわりした、これまた僕のかぶら屋定番「抹茶ハイ」(418円)をおともに、ひたすらにラーメンを食らうのみ。
 うずら、当然合う。にんにく、よく火が通って柔らかい食感のところにとんこつスープが絡んで、これまた合う。一緒にズズッと麺をすするとたまりません。
 そして気になる牛すじ。これがね、非常〜に良かったんですよ。

ラーメンの上にたっぷりの牛すじ

 ラーメンのスープって、味の方向性は塩気方面ですよね。牛すじはどちらかというと甘みがしっかり。これが融合することにより、ちゃんといい深みが生まれてるんですよ。なにより、ラーメンスープの絡んだとろとろの牛すじが、単純に絶品。これは新しい美味しさだぞ。それでいて、王道のチャーシューまで横に控えてるんだから。これぞまさに、夢のラーメン。あぁ、大満足。
 ちなみに余談になりますが、以前、かぶら屋の田無店の前を通った時、そこにもラーメンの看板があったんですよね。そこで今、情報を調べてみたところ、そっちはそっちで、とんこつじゃなく、王道の「中華そば」っぽいラーメンのようなんです。
 ということは……いずれ田無店にも、パリッコスペシャルを生み出しにいかないといけないということか。のぞむところだ。


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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