【練習問題①】:次の文章、「すぐに」の代わりに何を使う?――副詞の選択に現れる言語センスと、表現の精度|石黒圭『コミュ力は「副詞」で決まる』
言葉選びの楽しみ:引き出しを増やし、文脈にあった副詞を探す
副詞を選ぶ場合に何より必要なのは、当該の文脈に合った言葉をあきらめずに探すという姿勢です。最初に思いついた言葉で満足せず、もっとよい言葉がないか、考えつづける姿勢がその人の表現力を高めます。
そのさいに大事なのは前後の文脈です。文脈にぴったり合った言葉を探そうとすることが、よい副詞を選ぶ近道です。例を挙げてみましょう。
「すぐに」で悪いわけではないのですが、もっとふさわしい言葉がないか、考えてみましょう。第4章の「3.『時間の副詞』の広がり」で見た副詞を入れてみましょう。
三つのなかでどれがよいかと聞かれたら、「ただちに」がよさそうです。「すぐに」の速さがもっとも速いからです。ただ、この文脈にふさわしい「打てば響くような反応」を示す副詞とまでは言えない気がします。
そこで、同じ第4章の「3.『時間の副詞』の広がり」で見た別の副詞を入れてみることにしましょう。
このなかでは「即座に」がよさそうです。「打てば響くような反応」にもっとも近そうな印象だからです。
検討の結果、この文脈にふさわしい「すぐに」の意味の副詞は、「即座に」であるという結論になりました。それはそれでよいのですが、もう少し考えてみると、別解があることに気づくでしょう。
私が考えた別解の一つは「すかさず」です。
「すかさず」には、隙(すき)のなさ、抜け目のなさがあります。そのニュアンスがこの文脈では生きてきそうです。
似たものに「とっさに」もありますが、「とっさに」は自分自身が窮地(きゅうち)に陥ったときに即座に反応するという意味で、この文脈とはやや相性が悪そうです。
「すかさず」以外に考えられるもう一つの別解は「間髪を入れず」です。
「間髪を入れず」の「間髪」は、「かんぱつ」ではなく「かんはつ」と読みます。間に髪の毛を入れる隙間(すきま)もないという意味ですので、「かんぱつ」と発音して一語化すると、意味が違ってきてしまいます。
「間髪を入れず」はやや難しい副詞ですが、そのぶん「すかさず」よりも洗練された印象を与えますので有力な選択肢の一つでしょう。
このように、あれこれと考えることで、類語辞典には出てきにくい関連語も思いつくことができます。最終的に頼りになる副詞の引き出しは自分自身の頭脳です。
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以上、光文社新書『コミュ力は「副詞」で決まる』(石黒圭著)より一部を抜粋して公開しました。
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