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冷食晩酌最前線|パリッコの「つつまし酒」#242

まさかの箱寿司

 しばらく前によく行く地元のスーパーがリニューアルし、大きく衝撃を受けたことのひとつに「冷凍食品コーナーの充実っぷり」があります。
 自分の背よりも高いガラス扉の冷凍庫が何列も並び、世の中にはこんなにもあったのか! ってくらい、さまざまな冷凍食品がずらりと並んでいるんですよね。
 この連載ではかつて、2019年の7月に「冷食晩酌」という回、2020年の8月に「今夜は絶対、冷凍餃子!」という回で、冷凍食品をつまみに飲む話を書かせてもらいました。ちなみにその時は、昔からお弁当に入っているような、からあげ、たこ焼き、いかの天ぷらだったり、冷食は冷食でも餃子だけを何種類か食べ比べたりして、どちらも楽しかった。
 ところが最近の冷食コーナーは本当にすごいんです。ない料理はないんじゃないかってくらいジャンルは幅広いし、世界各国の聞いたことのないような料理もあれこれあるし、さまざまな人気店が監修した商品も多く、眺めているだけで飽きない。
 そこで今回は久々に、最近の冷凍食品がどれだけ進化してるかを確かめるべく、何パターンかの冷食晩酌をしていきたいと思います。あ、別に正確に裏をとって選んだわけではないので、「その商品、けっこう昔からあるよ」的なつっこみは、なしの方向でお願いできますと……。

きっかけはこいつ

 実は今回、冷食晩酌をしてみようかなと思ったきっかけの品があるんです。それがこの、「古市庵 なみはや寿司」。
 古市庵は、福岡県に本社を持つ「株式会社梅の花」が手がける、巻き寿司やいなり寿司を中心としたテイクアウト専門店。その人気商品のひとつに、大阪の箱寿司スタイルの「浪花寿司」があり、その冷食版といった立ち位置でしょうか。ちなみに、ひとつ税込1,166円と、なかなかいいお値段。が、このカラフルな見た目に、どうにも心がときめいちゃいまして。

解凍

 さて解凍。500wで3分、600wで2分20秒を目安に温め、その後30分〜1時間ほど常温に置いて解凍してください、と書いてありました。冷凍食品なのに、食べられるまでにけっこう時間がかかる。しかし、そこにむしろわくわくする。

いただきます

 かたわらに日本酒を用意して、さぁ、久々の冷食晩酌スタート!
 うんうん。ほどよく甘みがあり、みっしりと圧縮された酢飯が、そもそもうまい。そこに、穴子やら、サーモンやら、バッテラやら、それぞれ個性の違うネタがのっていて、食べ飽きない。そのなかにはなんと、海老やかにまで! ところどころのネタの間に、椎茸の煮たのなんかが挟まっていたりして、サプライズ感もある。意外なダークホースだったのが、梅入りの大根漬けだったりして。いや、これは楽しいな。

冷食には見えません

 テーブルにひとつのっているだけで雰囲気が華やかになるし、ちびちびとつまめてお酒のつまみにぴったりだし、冷凍庫保存で賞味期限は数ヶ月だそうだし、お正月用にもうひとつ、買っておこうかな〜。

いつでも小籠包が食べられる生活

 ところで冷食晩酌をしようと決め、さていつ買いものに行こうかな〜と思っていたある日の夜。タイムリーなことに、とあるTV番組で冷凍食品特集をしていたんですよね。そのなかで道ゆく人に「どんな冷凍食品が好きですか?」なんてインタビューをしていて、僕が特に、それ良さそう! と思ったのが、小籠包。確かに、餃子やシュウマイはともかく、自宅でいつでも小籠包が食べられるっていうのは、なんだかいい。考えたこともなかった。なんだか生活が少しだけ豊かになりそうだ。
 というわけで、続いては小籠包、そして、同じく大阪王将ブランドの、売り場での存在感がすごかった「暴走背脂ニンニクぶた餃」とやらを買ってきてみました。はい、今日は、点心2種盛り晩酌です。

大阪王将「小籠包」(購入時価格 236円)
大阪王将「暴走背脂ニンニクぶた餃」(258円)
小籠包は、そのままレンチンするだけ

 それぞれワット数や分数の目安が記載されているので、そのとおりに温めて、あっという間に完成。

点心2種盛り

 さて、まずは気になる小籠包。皮のなかが具と共にスープで満たされているのが最大の特徴である料理ですが、はたしてどうか。ひとつを小皿にとって、食べてみます。

すると!

 おぉ! 小籠包をお箸で割ってみると、なかからじゅわりといい香りのスープがちゃ〜んと溢れ出てきました。一気にぱくり。あ、これはうまい! 肉々しい餡の感じがとても自然だし、スープは旨味たっぷり。皮ももちっといい食感で、なるほど、小籠包の冷食ストック、ありだな!

続いてぶた餃

 これはですね、食べてからしばらくはちょっと理解が追いつかない、斬新な味ですね。商品名が「ぶた餃」だから餃子を想像して食べるんだけど、厚みのある皮がもっちもち&ぷるっぷる。確実に、今までに食べたことのない食感。また、中身の餡も、肉餃子や野菜餃子とは方向性が違って、ガツンとにんにく味の背脂がメインという感じ。かなり好き嫌いが分かれそうな、攻めた一品だな〜。
 ちなみに個人的には、レンチンよりもインスタントラーメンやスープに足して味にバリエーションとパンチを加える食べかたのほうがいいかな、という印象でした。なので、鶏ガラスープの素と醤油で簡易的な中華スープを作り、刻んだねぎとともに煮てみたんですが、あ、やっぱりこっちだわ。

餃子入りスープにして
食べてみます

 相変わらず今までに食べたことがない料理であることには変わらないんですが、スープの味に、にんにく背脂風味がほんのり加わって美味しいです。
 個人的には、興味がある方は一度試してみては? といった感想でした。

ワンプレート冷食の満足度

 さて、最後はだいぶわんぱくなメニュー。冷凍食品って、おかず、副菜、主食までがワンプレートになっていて、レンチン一発で一気に完成してしまうというコンセプトの商品も多いですよね。それの、かなりのガッツリ版。ずばり、トルコライスです!

ニップン「よくばりメシ トルコライス」(537円)

 トルコライスといえば、とんかつ、ピラフ、スパゲティが1皿にのった長崎の名物料理。それを全国どこでも気軽に食べられる時点で、まずすごいですよね。開封してみると、まさに“ガッツリメシ”という雰囲気だ。

景気がいいな

 当然、レンチン一発で完成。せっかくなのでお皿に盛り直してみると、あれ? この横にパセリでものってたら、レストランで普通に出てきてもおかしくないくらい、ちゃんとしたビジュアルじゃないです? ではでは、缶チューハイとともに、いっただっきま〜す!

テンション上がる〜

 がつがつ、もぐもぐ、ごくごく、うんうん。
 まず、みんな大好きナポリタン。これ、ソースとパスタが完全に混ざっているのではなく、ゆでたパスタの上にソースがかけてあるんですよね。それゆえ、ソースのフレッシュ感が前面に出てきて、正直、想像の上をゆく美味しさです。
 続いてカレーピラフ。これはもう、濃いめの味つけで文句なし。
 ただ、とんかつは、いえ、全然まずくないんです。ちゃんと衣はサクサクで、肉はやわらかい。ただ、その肉が、やっぱり一般的なとんかつと比べると、ほんのりと食感などに違和感があるかな。一度冷凍して解凍することを前提に作られた商品なので、そこに多大なる苦労や創意工夫もあるのでしょう。それに、かかっているドミグラスっぽいソースがいい味で、結果的にじゅうぶん美味しく食べられたんですけどね。

文句を言ってはバチが当たるな

 と、さすがに作りたての料理とは違う、冷凍食品。なにもかもが絶品で最高〜! というわけにはいかない点もありましたが、総じて楽しく飲むことができました。それに、これらがすべて、冷凍庫に長期間保存しておけて、レンチンですぐに食べられるんですもんねぇ。
 あ、ちなみにもうひとつ、「のり弁」をそのまま丸ごと冷凍したという、これまたインパクト抜群の一品も買ってあったんだった。

いなば「直火釜炊ご飯 のり弁」

 ただ正直なところ、僕、毎晩自分でおつまみを作って晩酌をするのが大好きなこともあり、連日冷食をつまみに飲んでいたら、若干心身が疲れてきてしまった感がありまして、今回の取材期間には食べきれませんでした。
 またしばらくしたころに食べてみて、感想はどこかしらでお伝えできればと〜。


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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