シェアサイクリングドリンキング|パリッコの「つつまし酒」#215
長年の悩みを一気に解決
近年、やたらと街なかで目にするようになったものに「シェアサイクル」があります。
駅前の繁華街などに限らず、ちょっとした公園の入り口あたりに電動アシストつき自転車複数台が停めてあって、利用登録をすると誰でも気軽に借りることができるらしい。なんだかおもしろそうだけど、自転車なら持ってるしなぁ。なんて感じで、今までスルーしていました。
ところが最近、ある思いつきをきっかけに、猛烈にシェアサイクルを利用してみたくなったんですよね。
そもそも僕は、電動自転車が大好き。我が家には娘が保育園へ行くようになったことをきっかけに子乗せ電動自転車が導入されたんですが、あの、ほぼ筋力を使わなくてもぐいーんとアシストしてもらえて、どこまでも進んでいけそうな感じ。ものすごく快適で、今や、電動自転車こそがこの世で最高の乗りものなんじゃないか? とすら思っているほど。
ところが唯一にして最大の欠点もあります。それは、車やバイクとは違うとはいえ、大好きなお酒を飲んでしまえば、即「飲酒運転」になってしまうということ。転んで怪我をするおそれもあるし、なにより最悪、事故を起こして人様に迷惑をかけてしまうなんてことが、あっていいはずがありません。
話が長くなりましたが、その問題を一気に解決するのがシェアサイクルだということに気がついたんですよ。つまり、家の近所で自転車を借りて、気ままにサイクリングを楽しむ。で、どこでも好きな街へ行って、その街にあるサイクルスポットに返却し、お酒を飲んで、帰りは公共交通機関で帰ってくる。これにより、「電動サイクリング」と「飲酒」という、僕の大好きでありながら今まで水と油のように相反していた趣味が、同時に楽しめるじゃないの! というわけなんですね。
さっそく利用方法などを検索してみると、我が街にもある「HELLO CYCLING」というサービスが、スポットも豊富で使い勝手が良さそう。使いかたは、まずはスマホにアプリをダウンロードし、決済方法などの設定をすれば、あとは難しいことはなさそうです。
よし、行ってみっか! シェアサイクリングドリンキング!
たどり着いた街は……
最初はなんだかドキドキどぎまぎしてしまいつつも、無事レンタル完了。料金は、車種にもよって違うようですが、今回借りたものは、最初の30分が130円で、以降、15分ごとに100円。僕はよく移動に路線バスを使うんですが、ちょっとした移動ならばこっちのほうが安いくらいですね。
よし、いざシェアサイクリングドリンキングにレッツゴー! というわけで、我が街である練馬区石神井公園から、自分になるべくなじみのない方面ということで、まずは深く考えずに北上してみることにします。方向的には、埼玉県に寄っていくことになりますか。
自転車をこぎだすと、おぉ、うちのとは違う乗り心地がやや新鮮ではあるものの、やっぱりいいな。このアシスト力の頼もしさ。快晴の天気もあいまって、とにかく気持ちいい。走り出して20分もすると、もはや自分の生活圏内をすっかり逸脱しますね。目的地はなく、ただ自分の本能にまかせ、道を選んでゆく。走っても走っても知らない風景。それが次々に視界に飛びこんでくる感覚に、謎の心身リフレッシュ効果をものすごく感じます。
また、次々と、それはもう次々と「こんど行きたいリスト」に追加するべき飲食店が見つかり、いったん停車してメモがわりに写真をとるのが忙しいくらい。これまでならば、「だけど、行くのめんどくさそうだしな……」とあきらめていた場所でも、シェアサイクルという移動手段を手に入れた今ならば、行ける! いつでも! なんだこの万能感は!
てな感じでひたすら走り続け、東武東上線の、成増〜和光市方面を経て、朝霞あたりまで到着。ただ、これらの駅は、数は少ないながらも一応飲み歩いてみたことがあります。そこで、もう一声! とさらに自転車をこぎすすめ、東武東上線「志木駅」に到着。よし、ここはもう、完全に自分にとって未開の地だ。今日は、朝起きた時には来ることを想像すらしていなかった、この志木の街で飲んで帰ることにしよう。いぇ〜い! 楽しい〜!
ちなみに最終的なレンタル料金は、利用時間1時間17分で、530円でした。あと2分縮めていればもう100円安かったことは若干悔しいけれど、こんなに楽しかったんだからなんの文句もありません。
初志木、初ビッグ、堪能
さて、生まれてはじめて歩く志木の街。ここはすでに埼玉県。確かに、僕の住む練馬区は埼玉県に隣接してますけども、突然の隣県はやっぱり興奮しますよ。さてどんな街なんだろうか。まず、かなり栄えている印象はありますね。ただ不安要素として、フリーライターである僕が気兼ねなくこんな遊びをしていられる時間帯ということで、今、まだ午後3時なんですよね。通常の酒場は空いていないでしょう。さて、1軒でもいいから飲める店はあるのか? できればどこにでもあるチェーン店以外で。いや、ゾクゾクするわ。
で、ひととおり駅周辺を歩いてみたところ、いいですわ、志木。まだ営業前ながら、こんど行ってみたい酒場がごろごろ見つかる。絶対に夜に飲み歩いたら楽しい街ですね。
というような感じで徘徊をしていると、お? この時間帯でも灯っている赤ちょうちんを発見しましたよ。
一見小綺麗なチェーン店風にも見えますが、少なくとも僕は初めて目にします、「大」という店名。この時間はテイクアウトのみかな? とも思いつつ近づいてみると、なんと入り口に「昼12時から営業中!」の文字が。おー神よ。当然、入店以外の選択肢などあるはずもなく。
私は今、これまでの人生で縁もゆかりもなかった志木の街で、このように無事、しっかりとナカの濃いホッピーセットに酔いしれています。あぁ楽しい。
お通しは野菜と鶏肉たっぷりの煮もので、醤油系の濃いめの味つけとたっぷりのもやしのおかげで、どこかラーメンっぽい印象もあり、お酒がすすみます。
通常メニューも豊富でリーズナブル。さらに気になるのが、頭上の日替わりホワイトボード。
このなかから、超〜悩みつつも、大好物の「しゅうまい」と「アスパラみそマヨ」いってみますかね。
あぁ、いい。すごくいい。大さん。ん? 箸袋を見ると、正式な店名、大と書いて「ビッグ」と読むみたいですね。はは、ビッグ。いい〜! どうやら川越あたりを中心に、ここを含めて12店舗ある、いわゆるローカルチェーンみたいだ。もう大好きだ。ビッグのことが。
シンプルに肉々しいシュウマイは、細かく刻んだたけのこが心地いい食感。アスパラも甘くてみずみずしくて最高ですね。なんだかおかしな感想かもしれないけれど、みそマヨをつけて食べると、「ごまあえ」でも食べてるんじゃないかというくらいに旨味が濃い。アスパラの質がいいのか、それともみそマヨとの相性か。とにかく、シンプルながら驚くべき美味しさです。あと、安い。
メインの焼鳥も注文してみました。「とりみ(もも)」「つくね」「上皮」「豚かた串」の4本。味はおまかせで。1本ずつていねいにお皿にのせられて提供してもらってしまい恐縮。
はい。どれもうまい。特にちょっと高級串の部類だった上皮と豚かた。上皮は肉厚でとろりと柔らかく、豚かたは、運動量の多い部位らしくて、濃い旨味とあっさり感が同居する、鶏でいうところの「親鶏」にも通じる美味しさです。
あまりにも居心地が良く、ホッピーのナカ、さらにはセットをもう一巡追加し、さらにレギュラーメニューから「なす焼き」も追加し、初志木、初ビッグを、堪能しすぎってくらいに堪能しました。
ちなみに帰り道は、東武東上線で4駅の成増まで行って、そこから路線バスで石神井公園へ、なんの問題もなくスムーズに帰宅。
楽しかったな〜、シェアサイクリングドリンキング。この遊び、はっきり言って、僕の新しいライフワークに加わりそうです。