ちょい飲みできる韓国料理屋に「韓激」!|パリッコの「つつまし酒」#179
誰かどうにかして!
タイ料理とか、インド・ネパール料理とか、韓国料理とかって、大好きなんですけど、ひとりでふらっと飲みに入れるお店が少ないじゃないですか。基本的にボリュームが多いから、料理をひとつ頼むとそれでお腹いっぱいになってしまう。それに、しっかりとした量のメイン料理はそれなりの値段がし、さらにお酒を数杯飲んだりすると、けっこう高くついてしまう。あんまり“ちょい飲み”ができるというイメージではないですよね。
イタリア料理ならば「サイゼリヤ」、中華料理なら「日高屋」というように、本場の味を忠実に再現したわけじゃなくてもいいから、安く気軽に飲めるチェーン店が、それぞれのジャンルにひとつずつでもできたらいいな〜なんて、前から思っていたんです。
まぁ、タイ料理は、朝から夜まで飲めて、軽めのおつまみもいろいろあって、多くの料理をハーフサイズで頼めて、しかもなにもかも絶品という完璧さをほこる、新宿の大好きなお店「モモタイ」があるので、僕的にはそれで満足(新宿が遠い方は満足じゃないでしょうが)。それからインド・ネパール系は、個人経営ながら、かなりリーズナブルにお酒を出すようなお店も増えてきた。だから、あとは韓国料理だ! 誰かどうにかして!
と、思っていたら、我らが「養老乃瀧」グループが、なんとドンピシャなお店を作ってくれたらしいんですよ。大好きなんすよね、養老乃瀧。特に実家のある大泉学園店にはかつてよく行ったなぁ。あの2階の座敷の居心地の良さ、もはや文化遺産でしょ。
思い描いていた店が
そんな養老乃瀧グループが新しく始めた系列店が「韓激」というお店。ホームページのコンセプト説明を一部引用させてもらいますと、「料理もドリンクも懐に優しい激安価格! アットホームな雰囲気とリーズナブルなお値段で、ふだん使いにピッタリです」「いろいろな料理を食べやすいように、小皿のおかずを多くご用意。ビールやサワーはもちろん、マッコリや美酢(ミチョ)など韓国のお酒も取りそろえています」「メニューは試行錯誤を重ねて磨き上げました。和のテイストを採り入れ、日本人の味覚にも合う韓国料理です」とのこと。
驚くべきことに、これらすべて、冒頭で僕が求めていると言った条件そのままじゃないですか? いたんだ、神様って……。
新しいお店ということでまだまだ店舗数は少なめですが、それでも大人気で、全国にどんどん増殖中らしい。東京の数店舗はもちろん、栃木、茨城、宮城、千葉、新潟、さらには徳島県にまで進出しているみたいですね。
そこで今日は、我が家からもっとも行きやすい「韓激 池袋南口店」へやって来てみました。
ここ、地下1階から3階まで系列店が入った本社ビルだそうで、その梁山泊感にもわくわくしますね。
入店し、店員さんに「ひとりです」と伝えると、なんとも落ち着くカウンター席に通してもらうことができました。
まずは生ビールでぐいっとのどを潤します。これから、真っ赤で、味が濃くて、辛〜い料理たちを食べることになるでしょうからね。
で、メニューを検討していく。
日本の居酒屋を思わせるような短冊メニューがいかにも大衆的で、お店のコンセプトが伝わってきます。そしてまた、値段もしっかり大衆的!
さらにメニュー表を眺めてみると、定番のキムチに、ナムルなどの冷菜に、チヂミに、餃子に、トッポギに、フライドチキン、韓国風おでん、ケランチム(韓国風茶碗蒸し)、韓国風の炒めもの、ごはんもの、汁もの、ラーメン類、純豆腐(スンドゥブ)、石焼きビビンバ、キンパ(のり巻)、さらには“シェア飯”として、サムギョプサル、プデチゲ、チーズタッカルビ、豪華に黒毛和牛を使った赤鍋、白鍋、デザート、などなどなどなど……。僕がぱっと想像できるようなものから、初めて聞くものまで、かなり幅広い料理が用意されています。でまた、その値段の安さにいちいち驚く。
これは悩むが……まず「スンドゥブ」は外せないでしょう。個人的にいちばん好きな韓国料理かもしれない。4種あるなかから、「あさりスンドゥブ」(462円)いきましょう。それからう〜ん、お手頃な値段からして、「チャプチェ」(319円)がちょうど良さそうだな。それともう1品、軽いおつまみで……よし、「いかキムチ」(319円)! お願いしま〜す!
危険な酒「チョウムチョロム」
ところで韓激の各席には小さなカセットコンロが置かれており、僕のいるカウンター席も例外ではありません。ただ、今日はひとり、さくっと飲むだけだし、鍋やラーメンを頼むわけでもない。まぁ使わないだろうなと思っていたんですね。ところが、まず届いたスンドゥブで、いきなり出番が。
へ〜、スンドゥブ、目の前でグツグツしながら食べられるの? こりゃあ楽しい。おぎのやの釜飯くらいの小ぶりな鍋が、たっぷりの具とスープで満たされ、なんともいい佇まいじゃないですか。店員さんによると、あさりがぱかっと開いてから2、3分したら火を止め、ついてきた卵黄をぽとりと落として完成とのことで、素直にそのとおりにしてみます。
スンドゥブができるまでの間、生ビールのおともにつまむいかキムチが、いきなりいい味! むちむちのいかに甘辛しょっぱい濃厚キムチ味がしっかりと染み込んで、いか好きとしてはたまらないものがありますな。
小ぶりなのであっという間に火が通り、完成したスンドゥブ。もうもうと湯気を上げる鍋から直接とって、熱々をはふはふ……ああ〜! これはやられた。あさりと韓国唐辛子の旨味がたっぷりの、これまた甘辛しょっぱベースの汁。それに芯まで熱された、もうなんだ、ふわっふわで、クリームのように滑らかな絹豆腐のうまさ! そして、のどに感じる熱さ! 早くビールで消火消火!
なんてことをやっていると、チャプチェも到着。あれ? もっと小皿の料理を想像してたんですが、これ、ちょっとした喫茶店のナポリタンくらいの量ありますよ。そんでまた、肉も野菜もたっぷりなのが嬉しすぎるじゃないですか。
ほどよく甘みのある醤油味と、香ばしいごま油の香り。それがふわっふわでもっちもちの春雨に絡み、そこに絡む具材の旨味や食感も多層的で。まだ判断するには時期尚早かもしれませんが、これ、韓激のマストメニューかもしれない……。
さて、ビールも飲み干してしまったことだし、そろそろ韓国焼酎いきましょう。というのも以前、先輩酒飲みで漫画家のラズウェル細木先生に聞いたことがあるんですが、韓国旅行へ行くと、現地の人たちはみんなこういう焼酎をショットグラスでカパカパ飲んでいると。で、空いた瓶をテーブルにずらりと並べていると。韓激でももちろん、そのスタイルで飲むことが可能。となればやってみたいじゃないですか。
いや〜、こうなってくると忙しいですよ。スンドゥブはふはふ。チャプチェつるつる。いかキムチもぐもぐ。その合間合間に、焼酎ぐいっ! ぐいっ! うわぁ、この酒、クセのない甲類焼酎にほんのりと甘みを足したような感じで、異常に飲みやすい。度数は16度あるんですが、日本酒みたいにちびちびではなく、テキーラみたいに、まさに、かぱかぱっと空いちゃう。親切なことに店員さんがチェイサーのお水も持ってきてくれたんですが、それにしても危険な酒だわ〜。
と、僕がかつて思い描いていた夢がそのまま形になってしまったような店、韓激でのひとり飲みでした。
ただし、やっぱり慣れない店での立ち振る舞いっていうのは難しいですね。だって、このリーズナブルさでひと品ひと品がこんなにボリュームあると思ってなかったので、今、胃袋がはちきれんばかりですもん。それに、360mlの小ぶりなサイズとはいえ、ひとりでボトル焼酎はやりすぎでしたもん。
次にひとりで行くときは、つまみはチャプチェといかキムチで十分かもしれない。もしくは、スンドゥブとライスとか、ごはんものか、ラーメン系一品勝負とか。で、数人で行く機会があれば、気になるものをあれこれ頼んで、ボトルも頼んでだな。うんうん。
……おっと、いつのまにかすでに次回への想いを巡らせてしまってましたね。とにかく、こんな韓国料理屋、大歓迎です!