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すき家の「牛丼ライト」って、もしかして「肉豆腐」なのでは?|パリッコの「つつまし酒」#170

その存在は認識しつつも……

「吉野家」「松屋」と並び、日本三大牛丼チェーンの一角を担う「すき家」。
 と、業界の事情に詳しくもないのに独断と偏見で書き出してしまいましたが、たぶんそんな感じで間違ってないですよね? そんなすき家に「牛丼ライト」という商品があるという話は、以前からなんとなく認識していました。確か、健康管理やダイエットを意識する方のための糖質オフメニューということで、牛丼のごはんのかわりに豆腐が入ってるんですよね。要するに、牛丼の“アタマ”が豆腐にのっかってる状態というわけだ。そりゃあもはや、牛丼とは別のベクトルで美味しいだろうな。だってさ、甘辛く煮込んだ牛肉と玉ねぎ、豆腐の組み合わせだもん。うんうん。牛肉……玉ねぎ……豆腐……ん? あれ? ちょ、ちょ待てよ!
 はい。気がついてしまったんです。それってもしかして「肉豆腐」じゃね? と。
 僕の肉豆腐愛についてはこの連載で何度も語ってきました。居酒屋の定番おつまみである肉豆腐には、驚くほどのバリエーションが存在します。むしろ、ひとつとして同じものがないと言っていい。最低限必要な食材は、なんらかの「肉」と「豆腐」。それさえ入っていれば、どんな組み合わせだろうと肉豆腐を名乗れる。って、そんなまだるっこしい説明が不要なほど、「牛丼ライト」は肉豆腐ですよね。さも「牛丼のいちバリエーションですよ〜」なんて顔をしておきながら! もう!
 そうとわかれば、今夜はすき家の「肉豆腐」で一杯やるぞ〜。

すき家ってもしかして、日本一の店?

 と、家の最寄りのすき家にやってきました。
 すき家では以前、やわらかく煮込んだ巨大な鶏もも肉がどかんとのった「ほろほろチキンカレー」で飲んだことはある。ただ、カレー好きの僕はそちらににばかり気をとられ、影に隠した(と勝手に思いこんでいる)牛丼ライトの存在、そしてそれが肉豆腐であるという事実に気づくのがだいぶ遅れてしまった。うかつでしたね。肉豆腐好きとして。
 というわけで券売機を前に、今日は迷いなく「牛丼」から「牛丼ライト」のページへと進んでいきます。するとさすがトッピングの豊富さで知られるすき家。なんと、「牛丼ライト」「キムチ牛丼ライト」「ねぎ玉牛丼ライト」「とろ~り3種のチーズ牛丼ライト」「おろしポン酢牛丼ライト」「高菜明太マヨ牛丼ライト」「わさび山かけ牛丼ライト」「かつぶしオクラ牛丼ライト」と、8種類もの肉豆腐が存在するじゃないですか。しかもそのすべてで「お肉ミニ」「お肉並盛」「お肉大盛」を選ぶことができる。つまりその選択肢の数、24通り! 肉豆腐のバリエーションに限って言えば、すき家ってもしかして、日本一の店?
 さらに驚いたのが、すき家の「飲める店指数」の高さ。先述のトッピングに加えて、ずばり「おかず・おつまみ」なるページまで存在し、その種類も膨大すぎるんです!

あなたなら
どう組み立てますか?

 他にも、「ほろほろチキン」の単品や、定食のおかずである焼き魚単品なんかも選べたりして、いや〜、自分がいかにぼーっと生きてるかを思いしらされましたね。すき家って、居酒屋だったんだなぁ。
 そこで、すき家の券売機の前でこんなにもう〜んう〜んと思い悩んでるやつはそうそういないだろうっていうくらいに時間をかけ、今日僕が組み立てたデッキがこちら。

・牛丼ライト お肉並盛(480円)
・フライドにんにく(60円)
・納豆(90円)
・高菜明太マヨ(150円)
・のり(30円)
・ビール 中瓶(420円)

私はこうなりました

サポート勢も大活躍

 いや〜壮観。それでは、詳しい話はあとにしまして、すき家飲みを始めていきましょう。
 まずは瓶ビールをかわいらしいオリジナルグラスにトクトクっと注ぎ、ひと口。う〜ん、夏のスーパードライはやっぱりうまいな〜。また、中瓶で420円というかなりのお手頃価格が嬉しいじゃないですか。
 さて肝心の牛ど……じゃなかった、肉豆腐。「とろ~り3種のチーズ肉豆腐」や「わさび山かけ肉豆腐」などの変わり種も気になったけど、初めてなのでいちばんオーソドックスなものを選んでみました。

へ〜、これがすき家の肉豆腐か〜

 上にのってる牛煮込み部分は、いわゆる通常の甘辛味ですね。上品なだしの風味がしっかりと効いていて、薄切りで口当たりの良い牛肉がたっぷり。これだけでもう最高のつまみ。
 で、その下に見え隠れしているのが、キャベツ、レタス、にんじん、ブロッコリーなどを中心とした生野菜サラダ。どうやらポン酢ベースのドレッシングであえられているようで、さっぱりとした酸味が甘辛い牛肉と合わさるのも新鮮な美味しさです。

こうなってるわけね

 さらにその下、いよいよおでまし絹豆腐。ほんのりとポン酢風味も加わった甘辛汁に浸っているので、そのまま食べてももちろんうまく、それをときに牛肉で巻いて食べたり、ときに野菜と一緒にがさっとすくって食べたり。全体的に味がしっかりしているから、もちろんビールにも合います。
 いや〜これは楽しい肉豆腐だな。だってだって、今までに数々の肉豆腐を食べ歩いてきた僕でも、初めて出会いましたよ。冷たい豆腐と冷たい野菜サラダに、熱々の牛煮込みをかけた肉豆腐なんて。

七味をかけてもばっちりだ

 ちなみに、肉豆腐一品じゃ寂しいからと頼んだその他のサイドメニューたち。
 まずは「フライドにんにく」なんですが、こんなのはもう、僕の大好きな居酒屋つまみ「にんにく素揚げ」そのものじゃないですか。そこでひと粒ぽいっと口へほうりこむと、なるほど、トッピング用ゆえ、塩気がついてないんですね。それならばと醤油をたら〜り回しかければ、はい最高のおつまみに早変わり〜。

60円!

 さらに「納豆」と「高菜明太マヨ」。これはですね、見た瞬間に「ある計画」を思いつきまして、届いた時点で、高菜明太マヨのお皿に納豆をぶちこみ、よ〜く混ぜておいたんです。

牛丼用のネギもちょっとのせて

 で、しばし肉豆腐やにんにく揚げで飲みすすめ、そろそろかき混ぜられた納豆たちの興奮がおさまったかな〜という頃合いで、いざ! ……と食べるのもいいんですけど、ここはさらにおつまみらしく、「海苔で巻いちゃう」なんてどうでしょう?

味つけ海苔にのっけて巻いて

 あ〜こう、納豆ものや「ばくだん」なんかのぐしゃぐしゃ系つまみって、海苔で巻くことによってどうしてこうも酒がすすむんですかね! シャッキシャキの高菜の塩気と明太マヨのコク、さらには海苔というドレスまでまとってしまった納豆。今日のラインナップのなかで、最終的にこいつがいちばん飲めるつまみなんじゃないか? とすら思ったところで計算してみると、3品合わせても270円。

紅生姜での味変もいいですな〜

 と、天文学的なバリエーションで飲めてしまうことが僕のなかで判明したすき家。これからは、普通にごはんを食べる人の集まるピークタイムを外しつつ(それができるのもいい!)、ちょくちょく飲みに行かせてもらおうと思います〜。

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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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