【名言集】光文社新書の「#コトバのチカラ」 vol.92
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太田和彦『老舗になる居酒屋』
夕暮れがはやくなり、首筋にヒューと冷たい北風を感じたら一目散に居酒屋だ。何はともあれ熱燗キュー。ほっと一息ついて眺める品書きは豪華。まずは牡蠣。これが出てこそ冬を知る。冷たい生牡蠣をつるりとやったら、その殻に熱燗を注いで飲む牡蠣酒は、やや残る海の潮香がたまらない。
佐藤岳詩『「倫理の問題」とは何か』
本当のところでは、客観的な倫理的事実など存在せず、それゆえに倫理の問題に客観的な正解などないのです。そして答えがあるとすれば、それは私たちが自分の願望や欲求を投影して作り上げたもの、それだけなのです。
藤崎慎吾 田代省三 藤岡換太郎『深海のパイロット』
深海底には人間が実際に行かなければできないことがある。フィールドサイエンスと呼ばれる野外の調査を主とする科学では、潜水船に限らず全ての分野で野外に出かけて行って、そこで仕事をしなければ本当のことはわからないのである。
是永美恵子『生体肝移植を受けて』
癌と共存しながら毎日を送る。そんなきれいごと、私にはできない。そこまで割り切って生活するなんて。いつ来るのか、死の宣告は。あと半年? それとも数ヶ月? 時間は刻一刻と過ぎていく。これも私の運命なのか? まだまだやりたいことはたくさんある。
古市憲寿『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』
オルタナティブのない社会を生きるのは辛い。違う社会の可能性を構想する学問は、これからの時代、ますます必要となっていくと思う。
千住博『美は時を超える』
忘れてしまっている何か大切なものを思い出すこと。その役割を担うのが美です。美を通してとても大切な何か、かつては知っていたことを思い出していかなければなりません。美というものは生命の本能なのです。
宮下誠『ゲルニカ』
あらゆる絵画が世界を映し、自己を映すように、『ゲルニカ』もまた”鏡”である。そして、この鏡は、恐怖の、残虐さの、不安の世界を映し出すとともに、見る者の不安を、見る者の恐怖をも時に映し出す。ただ、一方で、見る者のヒューマニズムへの希求を、愛の希望を問いかけてもくる。