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どうする、老眼|辛酸なめ子

第六感が磨かれます

 40代に入った頃から、かすみ目や疲れ目などに悩まされるようになりました。もともと遠視や乱視があり、目があまり良くなかったのですが、気合いでなんとか見ていました。それが、年を重ねるごとに無理がきかなくなってきたようです。もしかしたら、外界のものばかりに目を向けず、自分の内側を見つめる、というフェーズに入ったのでしょうか。

 同年代の友人と集まると、薄暗いレストランで料理を頼もうとしてメニューが読めない、ということがよくあります。値段もよくわからないまま高い料理を注文して、もしかしてこれは中高年へのトラップでは? と思ってしまいます。

 価格でいうと、おしゃれなパン屋さんは茶色っぽい紙に手書きで値段を表記していることもあり、その値段も判読が難しいです。最近はパンの価格が高騰し、400円台ならまだしも800円台ということもあるので、値段はちゃんと確認したいところです。高級なパン屋さんで値段をスマホで撮影し、拡大して確認している50代くらいの女性がいて、共感しました。空いている場合は自分もやってみようと思いました。デパートの惣菜売り場でも、3と8を間違えそうになったことがあり、油断できません。100g300円と800円では大違いです。

 服の値札も見づらくなってきました。たまに0の数を間違えて、1万円だと思ったら10万円で、レジで値段を聞いて買うのをやめたことがあり、恥ずかしかったです。1と7、3と8、6と8なども見間違いやすいので、不安なときは店員さんに確認。また、目がぼやける代わりに、値段を当てる能力が少し高まってきたようです。この服はおいくら万円か、素材やデザイン、お店の雰囲気などから推測。そのあと値札を判読すると結構近いということが多いです。例えば先日も、セレクトショップのトップスを見て、28000円だと推測し、値札を見たら26400円でした。また、センサーを働かせると、だいたい全て3万円以上するアパレルショップは、店からお高い波動が漂っているのを感じて、怖じ気づいて入らずに素通り。値札を気にしないで買うような、真のおしゃれピープルや富裕層にはほど遠いです。

「スマホ老眼」「夕方老眼」

 値札以外にも、化粧品の成分表記が読めなくて全てどうでも良くなったり、洗顔料とクリーム、シャンプーとコンディショナーを間違えたり、様々な問題が発生しています。

 年齢的にも「老眼」なのだと思われますが、まだガチな「老眼」だと認めたくない気持ちもあり、若い世代でも目を酷使することによってなると言われる「スマホ老眼」や「夕方老眼」なのだと思うことにしています。

「老眼」は遠近を調節する水晶体や、水晶体を支える筋肉(毛様体筋)が加齢によって硬くなって調整しづらくなり、細かい文字などが見えにくくなってしまう症状。「スマホ老眼」は近距離のスマホを見続けることで、毛様体筋の緊張が続いて、老眼と同じくピントの調整がききにくくなってしまいます。「夕方老眼」は、目を酷使し続けた夕方頃に、同じく毛様体筋が疲労してしまい、ピントが合いにくくなる症状。30代以下でも発生することがあるそうです。その他にも、見えづらい症状の原因は「白内障」「緑内障」「飛蚊症」「加齢黄斑変性」などの病気があります。人生100年時代と言われる今、40代50代で目がかすんでいる場合ではありません。目の健康を保つためには何をすれば良いのでしょう。

 ここ最近実践した老眼対策や視力回復法を紹介したいと思います。

・視力回復系YouTube動画

 おすすめに出ると再生せずにはいられない視力回復系動画。整体師さんが教えてくれているものなど信頼性が高いのですが、行程がやたら多く20以上の動作をしなければならないものもあって、習慣化させるのは難しいです。「見るだけでOK」という視力回復動画も、10分くらい図形の動きを見続けるのは大変でした。この気ぜわしい生活が、眼を疲労させているのだと思いますが……。動画の最後に「毎日1キロ先を5分ほどぼんやり眺めてみてください」と出てきましたが、東京では難しいです。

・ブルーベリーやアサイーなどを摂取しまくる

 ブルーベリーやアサイーに含まれるアントシアニンは抗酸化力に優れていて、活性酸素によるダメージを防いでくれるそうです。眼精疲労を改善すると言われていて、摂取すると少しラクになった感じはありますが、しばらくすると元に戻ります。

・サプリを購入

 眼に良いとされるサプリのネット広告に惹かれて、何社か購入してみました。どのサプリも最初の一回目は1000円前後なのですが、定期購入形式で、次の月からかなり高額に。一袋60粒で4000円くらいから6000円くらいまでで、富裕層の高齢者なら良いかもしれません。成分も、ブルーベリーよりもはるかに多いアントシアニンが含まれていたり、こちらも抗酸化作用が期待できる天然のルテインが入っていたり、クオリティも高いようですが……。高さに驚いて2、3ヶ月でやめてしまいましたが、継続使用するほど効果が高いとのこと。1ヶ月ほどの使用では、少し眼の疲労が軽減したようです。

・目薬を購入

 眼精疲労に効く目薬のCMを見ると、そのあと薬局に行って購入したくなります。目の奥の痛みなど、辛い症状が一時的に緩和され、ドライアイ気味なのでその対策にもなります。そもそもまばたきが少ないので、目薬をさした後はしばらく目を閉じて、水分をいきわたらせるようにしています。

・ツボ押し

 疲れ目を痛感するようになってから、眉毛周辺を押すとかなり気持ちが良いことに気付きました。ちょうど眉のあたりの凹みに「攅竹(さんちく)」というツボがあり、目の疲労にも効果的だそうで、体が欲していたのでしょう。他にも目の周りには、目頭のあたりの「清明」、黒目の下の「承泣(しょうきゅう)」など、疲れ目やドライアイに効くツボがあります。押すのはタダなので、思い出したら随時プッシュしたいです。耳たぶにも目に対応するツボがあって、引っ張ると良いそうです。

・目に霊験のある神社にお参り

 市ヶ谷の高台、市谷八幡神社の境内に佇む「茶ノ木稲荷神社」には「眼病平癒」の霊験があります。昔この山に住んでいた稲荷大神のお使いの白狐が木の枝で目を突いてしまい、好物のお茶を断ってお供えしたら目が治癒した、というのが由来です。本気で治したい人は、お茶を断って眼病治癒を祈願すると良いそうです。お茶を断つ自信がなく、お守りを買って目に当てていたら、しばらく視界が明るくなった感が。

・「憑かれ目」をブロック

「疲れ目」は「憑かれ目」が一因だと思っています。たまに、目が合うと異様に疲れる人、目に輝きがなくて闇に吸い込まれそうになる人と遭遇することがあります。自分の内側に闇や負のエネルギーを抱えている人の中には、目が合うとエネルギーを吸い取るタイプの人がいて要注意です。暗い目の人、目の周りに不自然にシワがある人などは、あまり視線を合わせないようにして自分をガードした方が良いでしょう。

・スマホを眺める時間を減らす

 思い返すと、疲れ目やかすみ目が加速したのはiPadを使うようになってからです。文明の利器と引き換えに失ってしまったものを実感しています。毎日、寝る前と起きてからスマホをチェックしていましたが、とくにそんな緊急で重要な情報はないので、とりあえず朝起き抜けにすぐスマホを見るのはやめることにしました。朝は目を閉じてゆっくり瞑想するように。それから疲れ目は少し軽減されました。

・目についてのセミナーに参加

 先日は、参加費2万円もする「眼の活性化のための施術&ワークショップ」に参加しました。目の回復に有効という周波数を発生させ、デバイスを目の周りに当てる施術や、還元力を持った水で目を洗浄、耳ツボを刺激する、目に良い波長の光を発する特殊なLEDを眼に照射する、といった内容です。参加者が入れ替わりでこれらの施術を体験している合間に、整体の先生も施術してくださいます。

 その先生によると、老眼の主な原因は水晶体と毛様体筋の老化と言われていますが、近年スマホやパソコンのブルーライトが老化をさらに加速させてしまっているとのこと。先生は日本が世界で一番目が悪くなる、と予感し、その対策を考えなければという思いに至ったそうです。

 会場に集まったのは約20名。わかりやすいように白内障の人は白いシール、緑内障は緑のシールを貼り、その他は一番多い老眼の人、と分けられ、施術や光療法などを体験していきます。細胞に良い赤いライトを15分ほど眺めたり、横たわって目に良い周波数や音を発生させるデバイスを当ててもらったり、目の周りをマッサージしてもらったりしました。特別な水で目も洗い、アイメイクが落ちてしまったのが気になりました。目に良い情報も教えていただき、疲れ目には目を暖めるより冷やす方が良い、と、有益な情報を知ることができました。目を使いすぎて熱を帯びているときは、タオルごしに氷や水枕を当ててクールダウンするのがおすすめだとか。目に良い周波数が出るデバイスの音源を作った人は、日本で「肛門日光浴」をすすめている男性で、野外で四つん這いになって、肛門に日光を当てて健康を保っているとか。かなり上級者向けの健康法まで教えていただき、視力も少し回復したようで、効果は2週間ほど続きました。

見たくないものだらけの世界

 様々な老眼や眼精疲労対策を行なってきましたが、最後にかなり効果を感じたできごとがありました。通常、夕方以降は疲れ目がひどくなるのですが、先日、日本舞踊を観賞に行く機会がありました。会場はGINZA SIXの観世能楽堂で、「はなやなぎ寿じゅらく舞踊會」というタイトル。花柳流の日本舞踊家である花柳寿楽さんが、やんごとなき能楽堂で「石橋」「扇の寺」などの演目を華麗に舞われ、目の保養になりました。観ているときに、実際に目に涼しい風が吹いてきて、目が浄化されていくのを感じました。不思議と、舞台の遠くで琴を演奏している方の顔もはっきり見えます。この時間でこんなに目がラクなのは久しぶりです。

 考えてみれば、目は、私の欲求に合わせて半世紀も、見たくないものまで見せられてきたのでしょう。でも、この年になると、目にも我慢の限界が来て、見たいものを見せてほしい、と思っているのかもしれません。ネットの炎上ニュースや週刊誌のゴシップはもう見たくない、美しい自然や花や高尚な芸術を見て、良いエネルギーを吸収したい、と……。目が辛くなってきたら、目が見たいものを見る、そうすれば視力も回復し、心身も平和に導かれます。時には、目に決めてもらうのが良さそうです。

今回の言葉

いらない情報ばかり見せられ続けてきた目が、ついに臨界点に達したのが老眼という症状なのかもしれないので、目をいたわり保養になるものを見るようにしましょう。

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