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禁断の「天一丼」の作りかた|パリッコの「つつまし酒」#206


まさか買えたとは

今、僕の目の前にある箱

 突然ですがみなさま、この箱の中身、なんだと思います?
 って、もったいぶるようなことでもないので正解を発表しますけれども、箱にプリントされているとおり、こってりラーメンが人気のチェーン店「天下一品」のですね、なんと「オリジナルどんぶり」なんです!

じゃーん!

 いいでしょう? え? どうやって手に入れたのかって? いえいえ、キャンペーンの景品が当たったのでも、関係者から特別に譲り受けたのでも、ましてや、お店から盗んできたわけでもありません。
 いやね、先日、ちょっとした調べものの関係で、天一のオフィシャルサイトを見ていたんですよ。お前はなにを調べてるんだって話なんですが、そこはスルーしてもらって。で、そのなかの「オンラインショップ」のコーナーに、こいつが普通〜に売ってたんです。そりゃ驚きましたよ。そんなに手軽に手に入るものだとは思ってもいなかったので。お値段は税込み1500円。そこに、僕の住む東京だと送料が880円プラスされて、合計2380円。正直、最近は100均ででも買えることを思えば、ラーメンどんぶりひとつに2000円以上は安くない。けれども、決して高くもない。だって、一度こいつを手に入れてしまえば、自宅で一生、どんなラーメンでも、いや、なんならそばやうどんだって、なんならカレーライスだって、好きなだけこの天一どんぶりで食べられるんですよ? もうね、ノータイムで買ってました。
 で、届いたそのどんぶりが、今僕の目の前にあるというわけで、いや〜、嬉しいな。楽しいな。

あれとあれを合わせちゃえ!

 というわけでこれから、この新品のどんぶりを初めて使ってみようというところなんですが、さてなにを食べようか? そりゃあやっぱり、こってりラーメンがベストでしょう。
 実はですね、家の近所のローソンにあるんです。冷凍の、天一が監修したこってりラーメンが。その再現度がだいぶすごいって噂を聞き、一度食べてみたことがあるんですが、本気の本気で、天一のこってりラーメンなんですよね、あれ。あれしかないっしょ、このどんぶりで最初に食べるラーメンは。

ローソン「天下一品監修ラーメン」(495円)

 ただ、ひとつだけ気になる点も。このラーメン、量が比較的少なめなんですよね。いや、食べざかりでもない僕にはそれがちょうどいいくらいで、なんの文句もないですが、どんぶりに盛ると、若干寂しめの見た目になる不安がある。
 そこで、思いついてしまったんです。こっちはまだ食べたことがないものの、ローソンの同じ冷凍コーナーに、あったことを思い出したんです。

「天下一品監修炒飯」(322円)

 そう、同じく天下一品監修の、チャーハン! これまた、天一のこってりスープを効かせたチャーハンだそうで、一緒に食べて合わないはずがなさすぎるでしょう。えぇ、お察しのとおり。こいつらをどんぶりのなかで合体させて、禁断の「天一丼」を作って食らってやろうというのが、今回の趣旨というわけで。

材料はこれだけ!

 さっそく作っていきましょう。どちらもレンジで温めるだけで食べられるんですが、ラーメンはレンジ専用。チャーハンはフライパンでも作れるということで、ラーメンをレンチンしつつ、同時にフライパンでチャーハンも炒めていきます。

ジューッ!

 中火で、油もひかず、全体に火を通すだけでいいというお手軽さ。それでいながら、たまらずこの時点で味見をしてみると、もうね、めっちゃくちゃ美味しい! パラパラっとした名人級の炒め具合で、味わいは強すぎず、わりとシンプルながら、旨味がしっかりと効いている。これがあれなわけか。こってりスープの隠し味か。

どさっ

 こいつをどさっとどんぶりによそった瞬間、キッチンからは「チーン!」という音が。うーん、我ながらほれぼれする手際。それをあちあちと持ってきたら、躊躇することなくいっちゃいましょう。チャーハンの上に、どばーっ! と。

どばーっ

 はい、わずか数分で完成。オリジナルの、天一丼!
 これがね、あまりにも読みどおりで笑っちゃったくらいなんですが、全体が決して、べしゃべしゃのしゃばしゃばにならないんです。だって、見てください上の写真。チャーハンの一部、ラーメンを上からかけられてなお、スープが染みずに、もとのパラパラ感をたもっているでしょう? これぞ究極のどろどろっぷりを誇る、天一こってりスープのなせる技。そんじょそこらのラーメンじゃこうはいかないぜ!

明日もお待ちしてます

 おとものビールも用意して、さぁ、あとはただただ食らうのみ。天一のどんぶりによそった天一丼。まさに、天一丼 IN 天一丼!

いただきま〜す!

 見慣れた、それでいて家にあることにはきちんと違和感のあるどんぶりから、もうもうと立ち上る湯気。高鳴り続ける鼓動。

こってりスープ

 まずはれんげでスープをひと口。あ〜、そうそうこれこれ! この、究極にどろどろな口当たりのなかに、野菜や鶏の旨味が飽和した、魔法汁。それでいて油っこすぎたり、しつこすぎたりはしない、奇跡のバランス感覚。それが自宅で、しかも本物のどんぶりで味わえちゃうんだもんな〜。

麺もハイクオリティ

 続いては麺。やわめの、激うまスープをたっぷりとまとったふるふる食感が、これまた幸せすぎます。
 で、ここからが未知の領域。そう、スープに浸った天一チャーハンゾーンです。

さてどうだ

 するとこれが、まぁ、当然の結果ではあるんですけれども、うまい。チャーハンが比較的あっさりしているから、味が過剰になりすぎないんですよね。そしてまた、味のベースがこってりスープ由来なので、そりゃあもう相性が素晴らしい。ばくばく、ズルズル、ズズズ、ごくごく……と、夢中で食べすすめつつ、こんなにも非日常な食事を自宅で味わえることに感謝します。

こんなことだってできちゃう
してます? なにを?
あ、「明日もお待ち」ね

 すべてを食べつくしたところでどんぶりから顔をだす、おなじみの「明日もお待ちしてます。」の文字。これ、お店で見ると毎回、ふふっと笑ってしまうんですよね。だって、そりゃあ大好きですよ、天一。だけどさ、明日はさすがに来ないもん。
 けれどもここは自宅。明日はこのどんぶりで、そばやうどんやカレーライスを食べたっていい(しつこい)。ならば、明日もね。うん、考えておくよ。という気持ちにもなれます。
 あらためて、買って良かった。天一どんぶり。あ、もしどうしてもという方がいるなら、レンタル貸し出しをしてもいいですよ。その場合、1泊2000円でどうでしょうか? 往復送料は別途ご負担ください。


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パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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