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【14位】ザ・ビートルズの1曲― 「くじけるなよ」と、ナナナーナと、コーダの向こう側へ

「ヘイ・ジュード」ザ・ビートルズ(1968年8月/Apple/英)

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Genre: Pop Rock
Hey Jude - The Beatles (Aug. 68) Apple, UK
(Lennon–McCartney) Produced by George Martin
(RS 8 / NME 77) 493 + 424 = 917

続いてまたビートルズ。だが前回(15位の「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」)から、なんと26点の大きな差。〈ローリング・ストーン〉の高評価のせいだ(同リストで8位)。一方〈NME〉では「ストロベリー~」のほうが上だった。米英でねじれ現象が生じ「アメリカ人の好み」が押し切った。しかしこちらも「決定的な」1曲だ。

なんと言ってもこの曲は「コーダのリフレイン」だ。例の「ナー・ナー・ナ、ナナナーナー、ナナナーナー、ヘイ・ジュード」という、4分以上に渡って繰り広げられるあの繰り返し。たとえばその場がコンサート会場ならば、観客もみんな唱和して、大きく大きく盛り上がっていく……というようなところが「アメリカ心」を打ったのではないか、と僕は考える(とはいえ、スタジアムでの合唱ならばイギリス人のお家芸なのだが)。

いつもの共作名義ながら、書いたのはリード・ヴォーカルをつとめるポール・マッカートニー。彼らしい、健全かつまっすぐな情感にあふれたナンバーだ。「ジュード」のモデルには諸説あるのだが、最も有力なものが、ジョン・レノンの最初の息子、ジュリアンだ。オノ・ヨーコとの愛ゆえに、当時の妻シンシアとの関係がほとんど破綻していたレノンの陰で大きな影響を受けていたかもしれない5歳の幼児を「勇気づけ、はげます」ためにマッカートニーがこの曲を書いた、と言われている。この「はげまし」のパートは、冒頭からヴァース4まで約3分間続く。そして「ベター、ベター」の繰り返しの直後に、怒涛のコーダだ。ストリングスだけじゃない、ホーンまで入った計36名のオーケストラに、合唱に、手拍子に、もう「なんでもある」状態で「ナナナーナー」と盛り上がり続ける。

当曲は、通称『ホワイト・アルバム』(『教養としてのロック名盤ベスト100』にランクイン。順位はここでは秘密)と呼ばれる、彼ら9枚目のイギリス盤アルバムの制作と同時進行で、シングル用に録音された。同シングルはレノンが主導した「レヴォリューション」をB面に収録。全英、ビルボードHOT100ともに1位を獲得。とくに後者は9週連続で1位を独占。68年の年間ランキングでも1位と、「抱きしめたい」以来の快挙を成し遂げる。ビートルズが経営するレコード・レーベル「アップル・レコーズ」の第1弾作品がこのシングルでもあった。ソロになってからのマッカートニーも、当曲をよく演奏している。ロンドン五輪の式典など、まるで「ここ一番」という局面で繰り出す大技みたいに、合唱の渦とエモーションの大波を、超巨大規模で発生させ続けている。

(次回は13位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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