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僕という心理実験 妹尾武治

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『未来は決まっており、自分の意志など存在しない。~心理学的決定論』が熱狂的な反響を巻き起こした妹尾武治さんによる心理学エッセイ。前著の内容をさらに深めた世界は、多くの読者の共感を… もっと読む
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2022年8月の記事一覧

虐待親に向けられる「子供の献身的な愛」―僕という心理実験29 妹尾武治

虐待親に向けられる「子供の献身的な愛」―僕という心理実験29 妹尾武治

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第3章 愛について③――愛を測った心理実験人間の共感力

2011年に心理学最高峰の学術雑誌サイコロジカル・サイエンスに「なぜ拷問は生まれるのか?」という論文が刊行された。ヒント無しで「冷凍庫の中に入るのはどの程度辛いか?」と考える場合、その辛さは実際に入った時に感じる辛さの主観値に比べ、過小評価されたものになる。

この質問の前に氷の入った冷水に手をつけさせて、それがか

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生命・存在の本質が「情報」なら、身体は不要?―僕という心理実験28 妹尾武治

生命・存在の本質が「情報」なら、身体は不要?―僕という心理実験28 妹尾武治

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第3章 愛について②――かなり“笑い”ができるAI爆笑は無理でも、クスッとはなるだろう。今、AIはかなり“笑い”ができる。

世界各地で、笑いを学習させ面白く答えさせるアプリ・SNSアカウントが存在する。膨大な数の大喜利のお題とその回答、そして人間がつけたその評価値を学習させる。すると始めてのお題に対しても、彼らは的確に答えられるようになる。ちなみに、劇場の漫才師の声と、

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笑いとサルのマウンティング行為の関係―僕という心理実験27 妹尾武治

笑いとサルのマウンティング行為の関係―僕という心理実験27 妹尾武治

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第3章 愛について①――笑いと孤独志村けんと北野武

志村けんが、生前のインタビューで「どうしてコント一筋でずっと笑いを続けられるのですか?」という質問に対して以下のように回答している。

ある母子家庭の親子から一通の手紙が届いた。「志村さんのコント番組の1時間が、1週間で1番の救いになっています。コント番組を見ていれば、少なくともその1時間は辛いことを忘れられ、そして次

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動物とセックスをする人間(動物性愛者)―僕という心理実験26 妹尾武治

動物とセックスをする人間(動物性愛者)―僕という心理実験26 妹尾武治

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第2章 日本社会と決定論⑱―対等であろうとする努力濱野ちひろ『聖なるズー』

どこまでの多様性を認めうるのか。例えば動物とセックスをする人間、動物性愛者と呼ばれる存在はどうか? 人間が犬や猫といった動物と性交すること。異常な行為だと聞く耳を持たずに断罪し、自分から遠ざける人も多いだろう。

『聖なるズー』の著者、濱野ちひろは男性から10年にわたる暴力の支配を受けて来たこと

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人が人を食べること―僕という心理実験25 妹尾武治

人が人を食べること―僕という心理実験25 妹尾武治

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第2章 日本社会と決定論⑰―正義がないなら悪もない食人文化

人が人を食べること。映画『ヒカリゴケ』では名優、三國連太郎がその様を、異常な目で怪演している。極限状態の人間を、ここまで演じ切ることが出来る三國は天才だとしか言いようがない。不遇な幼少期(支配階層の男性による母の性的搾取と、救ってくれた育ての父親の被差別の辛苦)の経験が、この目の実現の背景にあったことが察せられる

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