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ポスト・ポストモダンの文学|佐々木敦『90年代論』第5回
80年代の文学 90年代の文学は、80年代とはかなり異なったものであったと言えます。デケイドは――特に日本の場合は――直前の十年間からの転換、しばしば反転を志向する(あるいは見出そうとされる)傾向があります。「もはや○○年代ではない!」ということです。文学にかんしても基本的には同じで、90年代の文学シーンには百花繚乱だった80年代とは色々な面で違った価値観や特色が求められる空気があったと思います。
もっとみる戦争・音楽・演劇|佐々木敦『90年代論』第4回
戦争が始まった イラン・イラク戦争(イ・イ戦争/1980年~1988年)によって軍備を飛躍的に増強させたイラクは、経済的には窮状に陥っており、原油価格の大幅下落を惹き起こしたのはOPEC(石油輸出国機構)の制限を超えて原油を過剰生産しているクウェート(とアラブ首長国連邦)だとして批判、するとクウェートはイラクにイ・イ戦争時の400億ドルの借款の返済を要請し、二国の間で一挙に緊張が高まります。199
もっとみる「渋谷系」とは何だったのか?|佐々木敦『90年代論』第3回
フリッパーズギターの登場 1987年、当時はまだ10代だった5人の若者がバンドを始めます。名前はロリポック・ソニック、東京都内のライブハウスに出演して少しずつ存在を知られるようになり、カセットで音源をリリースしたのち、バンド名をフリッパーズ・ギターに改名、レコード会社ポリスターと契約し、1989年8月にアルバム『three cheers for our side~海へ行くつもりじゃなかった』でデ
もっとみるバブル崩壊と「J-POP」の誕生|佐々木敦『90年代論』第2回
バブルは本当に崩壊したのか? まず、あらためて確認しておきましょう。日本のいわゆる「バブル景気」が弾けたのは、1990年3月の総量規制が引き金だとされています。90年代が始まって2ヶ月ほどしか経っておらず、ほんの少し前まで日本経済は栄華を極めていたわけですから、バブル崩壊を証し立てる事象はすでに続々と出てきていたのにもかかわらず、多くの人々にとって、戦後最大の好況期であった「80年代」は続いていま
もっとみる「終わり」と「終わり」に挟まれた時代|佐々木敦『90年代論』第1回
90年代について考えてみたいと思います。
1990年代、すなわち1990年から1999年までの10年間は、2024年の現在から見ると、ずいぶんと過去の時代に思えます。なにしろ30年以上が経過しているのだから、実際、かなり昔です。読者の中には、まだ生まれていなかったり、物心がついていなかった方も多いと思います。すでに歴史化された時代と言ってもよいでしょう。それは百も承知で、あらためて「90年代