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【56位】エルヴィス・プレスリーの1曲―明るく、ワルく、快活に、エヴリバディがこれでロックした

「ジェイルハウス・ロック」エルヴィス・プレスリー(1957年9月/RCA Victor/米)

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Genre: Rockabilly, Rock 'n' Roll
Jailhouse Rock - Elvis Presley (Sep. 57) RCA Victor, US
(Jerry Leiber and Mike Stoller) Produced by Jerry Leiber and Mike Stoller
(RS 67 / NME 235) 434 + 266 = 700
※58位から56位までの3曲が同スコア 

なんと初エルヴィス。当リストだけじゃない。『教養としてのロック名盤ベスト100』でも、じつは……(というところは、同書のあとがきをぜひご覧いただきたい)。

ロックの世界で唯一ひとり、ただひとこと「キング」と言えば、彼のみを指す。キング・オブ・ロックンロールだ。50年代に端を発する、ロック音楽と関連する文化すべての源流において、地上のだれも敵わない「王者」として君臨していたエルヴィス・プレスリー――の、キレキレのこのナンバーが、前回(57位)のレディオヘッドや前々回(58位)のホワイト・ストライプスと同スコアで並ぶところに、なんとも言えない感慨を僕は抱く。

ご存じ「監獄ロック」が邦題だ。彼の三作目の主演映画のタイトル曲として、あの「ハウンド・ドッグ」の作者であるリーバーとストーラーのコンビが書き下ろした。映画でのダンス&歌唱シーンも印象深い。これぞロカビリー、これぞパーティ・チューン。歌舞伎的な「見得を切る」イントロから、しびれるエネルギーの横溢だ。2分半そこそこのなかに、のちの世の人類が日々享受し続けることになる「ロックの楽しさ」のほとんどすべてが、ごく自然に明朗に、解き放たれている。まるでお日様の光のように。

という曲が、じつはほぼ史上初めて男性同性愛者やクイアの恋愛をも歌ったものだった、という事実は大きい。囚人番号47番が3番に「お前みたいなかわいいジェイルバードは初めてだ」という下りがそれだ。「監獄の囚人の歌」だったから、当時の世相下でもとくに指弾されなかったのだが、これは「きわめて画期的」な出来事だった。映画用の曲だというフィクション性が「ロックの未来」を無闇に押し広げてしまったことの証明が、この1曲だ。異名にて曲中に登場してくる「囚人仲間」たちそれぞれの描写も、とてもいい。

EPにて発表された当曲は、すさまじいヒットとなった。全米1位(7週)、全英1位(3週)、しかもイギリスでは史上初の「初登場1位を獲った」曲となる。さらにアメリカでは、カントリー・チャートとR&Bチャートでも1位を奪取。つまりあらゆる聴き手にロックンロールを啓蒙する役割を果たし、エルヴィスの代表曲のひとつとなった。

だからカヴァーも、星の数ほどある。ザ・クオリーメン時代のジョン・レノンの持ち歌だった(57年の時点ですでに歌っていた)のは有名な話だ。映画と重なるところでは『ブルース・ブラザーズ』(80年)でのムショ内演奏シーンは好まれたし、『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』(02年)のようなパロディも、これまた無数にある。

(次回は55位、お楽しみに! 毎週火曜・金曜更新予定です)

※凡例:
●タイトル表記は、曲名、アーティスト名の順。括弧内は、オリジナル・シングル盤の発表年月、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●ソングライター名を英文の括弧内に、そのあとにプロデューサー名を記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
川崎大助(かわさきだいすけ)
1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌「ロッキング・オン」にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌「米国音楽」を創刊。執筆のほか、編集やデザイン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌「インザシティ」に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)、『教養としてのロック名盤ベスト100』(光文社新書)、訳書に『フレディ・マーキュリー 写真のなかの人生 ~The Great Pretender』(光文社)がある。
Twitterは@dsk_kawasaki


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