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エンタメ小説家の失敗学 by平山瑞穂

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本連載は小説家の平山瑞穂さんが、自らの身に起こったことを赤裸々に書き綴ったものです。 平山さんは、2004年に『ラス・マンチャス通信』で第16回日本ファンタジーノベル大賞を受賞… もっと読む
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2022年8月の記事一覧

ネットのレビューに打ちのめされる――エンタメ小説家の失敗学28 by平山瑞穂

ネットのレビューに打ちのめされる――エンタメ小説家の失敗学28 by平山瑞穂

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第5章 「編集者受け」を盲信してはならない Ⅴ――漂流する原稿巨大な壁

 さしあたっての問題は、大見栄を切って新潮社から引き上げてしまった『ネオテニーたちの夜明け』の引き取り先をどうするかだった。とりあえず、『プロトコル』を出してもらった実業之日本社の担当編集者にメールで率直に経緯を明かし、かけあってみたところ、担当者本人は驚くほどの好反応で、「

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どうしてこんな寝覚めの悪い結末になったのか――エンタメ小説家の失敗学27 by平山瑞穂

どうしてこんな寝覚めの悪い結末になったのか――エンタメ小説家の失敗学27 by平山瑞穂

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第5章 「編集者受け」を盲信してはならない Ⅳ――『ネオテニーたちの夜明け』執筆をめぐって「黒いランチ」

 自己啓発本にハマり、「デキる女オーラ」を撒き散らしているが、実際には仕事の要領が異様に悪く、無駄な残業ばかりしている三二歳の既婚女性、冴えない見かけながらカラオケのスキルだけは秀でており、社内の複数の若手女子が「サシカラ」の誘いに応じること

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「そろそろ受賞レースに打って出ていく時期です」――エンタメ小説家の失敗学26 by平山瑞穂

「そろそろ受賞レースに打って出ていく時期です」――エンタメ小説家の失敗学26 by平山瑞穂

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第5章 「編集者受け」を盲信してはならない Ⅲ「そろそろ受賞レースに打って出ていく時期です」

 さて、基本的には同じ問題に属する、そしてある意味で衝撃を受けたケースをここでもうひとつ紹介したいのだが、それを語るためには、当該の作品をめぐって僕が犯したもうひとつの失敗についても、触れないわけにはいかなくなる。話がやや込み入ってしまって心苦しいのだが

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編集者と一般読者の温度差はなぜ生じるのか?――エンタメ小説家の失敗学25 by平山瑞穂

編集者と一般読者の温度差はなぜ生じるのか?――エンタメ小説家の失敗学25 by平山瑞穂

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第5章 「編集者受け」を盲信してはならない Ⅱスピンオフ作品誕生

 その余勢を駆って、二年後にはスピンオフ作品、『有村ちさとによると世界は』まで刊行される運びとなったことには、誰よりも僕自身が驚いていたと思う。

 西村京太郎の十津川警部シリーズ、東野圭吾のガリレオシリーズなどの名を出すまでもなく、キャラクターの魅力だけで読者を引っ張っていける登

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「編集者受け」を盲信してはならない ――エンタメ小説家の失敗学24 by平山瑞穂

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第5章 「編集者受け」を盲信してはならない Ⅰ「ぜひわが社でも」

 ヒットにこそ恵まれなかったものの、僕は概して、編集者からの覚えはめでたいタイプの書き手だったと思う。売れたかどうかにかかわらず、編集者に作品をおもしろいと思ってもらえる確率は比較的高かったということだ。だからこそ僕は、少なくともある時期までは、名だたる出版社から続々と声をかけても

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