カミュが『ペスト』で描いたのは「始まり」も「終わり」もないパンデミックの単調さである|福嶋亮大
病気のなかに入ること 二〇一九年に発生した新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけにして、文化と病の関係を多面的に考えること、そのために病の文化史を改めて回顧してみること、それが本書の狙いです。もとより、それは新書一冊で書くには途方もないテーマですが、本格的な論考に入る前に、思考のルートをあらかじめ舗装しておくことも無益ではないでしょう。
それにしても、病とは何でしょうか。私なりに説明するならば、それは世界の現れ方を変えるものです。疫病が蔓延すると、それまで楽しみの場で