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開発費10億円超のゲーム市場で勝ち続けるための「伝え方」とは?

なんと前回のnote公開日(9/8)にいきなりAmazonで「ベストセラー1位(光文社新書)」をいただきました…!ありがとうございます。
今回からは全6回にわたり、伝え方は「順番」がすべて』(小沼竜太・著)の本文を抜粋してご紹介します! 小沼さんは〝ゲームの宣伝屋〟として「Fate/Grand Order」や「ペルソナ」「真・女神転生」シリーズなど人気作のプロモーションに携わる「伝え方」のプロ。初回はゲーム業界の特殊性と、勝ち続けるための「伝え方」についてざっくりとご紹介します。
実は2020年は、ゲーム市場が人類の歴史の中で最大まで膨張したタイミングなのだとか(Newzoo調べ)「インベーダーゲーム」から始まり、今や一大産業に成長した日本のゲーム業界史をおさらいしましょう。

開発費10億超えの博打

 日本でゲーム市場が生まれてから、45年が経過した。
 ゲーム市場は、極めて特殊な性質を持つ。その一つに、過去45年間にわたって、右肩上がりの成長を続けてきたことが挙げられる。市場の中で、覇権カテゴリが変動したことは何度かあるが、実は、市場全体のシュリンクを経験したことがほぼないのだ(この構造の秘密に関しては後述する)。結果として45年にわたり、ゲームユーザーと呼ばれる顧客層を拡大し続けてきた。
 一方、現在のゲーム市場は開発規模が10億円に達する、あるいは超えることもざらで、負けられない博打の場でもある。また複数の事情から、「消費者に商品(モノ・サービス)を認知してもらい、興味を喚起し、購買を促進する行為」すなわちプロモーションの難易度が上昇している。現場の担当者の悲鳴は共通だ。
「今の時代、ゲームってどうやって売ったらいいんでしょう?」

重要なのは「順番」

 いつの時代も、売る方法、売るノウハウ、手法についての情報は需要がある。
 効果的な具体的な施策は何か? 何をやれば、何にお金を投じれば、売上は伸びるのか?
 その問いに対しての(一応の)回答は常に存在する。しかし、具体的な施策から考え始めた時点で、勝ちは遠ざかる。
 ここで重要なのは、組み合わせではなく順番、ということだ。
 ユーザーと商品との対話に必要なのは、施策の組み合わせではない。「どんな施策をどのような組み合わせで行うか」は、重要ではない。
 重要なのは「どの順番で施策を行うか」ということ。対話の順番が大事だ。
 これはゲーム業界に限った話ではなく、情報が氾濫するこの時代に商品(モノ・サービス)を売ろうとする多くの人たちにもあてはまるだろう。
 膨大な情報の中から自社の商品に気づいてもらい、対話を重ね心理的な距離を近づけ、愛着を持ってもらい購入してもらう。購入後は口コミで周囲に情報を拡散してもらう。
 そういった一連の流れを生み出すには、消費者に対して「何を行うか」ではなく「どの順番で行うか」が大事だ。
 相手との距離を常に測りながら、あらゆる文脈を読み、その都度最良と思われる具体的な施策を、順を追って提案していく。順番を間違えると人の心は離れる。順番を徹底的に考える。

始まりはインベーダーゲーム

「スペースインベーダー」の爆発的なヒットで、ゲーム市場は産声をあげた。「インベーダーゲーム」は、純正品・許諾品が約20万台、許諾なしの模倣品が30万台出荷されたと言われている。アーケードゲーム(ゲームセンターなどに設置された業務用ゲーム機の総称)では名高い「ゼビウス」というタイトルが1万5000台程度の出荷台数であるというから、「インベーダーゲーム」が社会現象と呼べるレベルの大ヒットであったと理解していただけると思う。「スペースインベーダー」以前にも、コンピュータゲームは存在した。しかし、世の中に熱狂を生み出し、それが後のゲーム市場につながっていったという点で、本書では「スペースインベーダー」をもってゲーム市場の始まりと定義したい。「スペースインベーダー」の発売と、その熱狂はそのままアーケードゲーム市場の成立へとつながっていき、現在に至る市場の歴史を紡いでいく。

ゲーム市場の特殊性1:新旧の技術が共存しうる

「スペースインベーダー」によって誕生したゲーム市場だが、極めて特殊な性質を持っている。
 1つ目は、過去45年間にわたって、右肩上がりの成長を続けていることだ。純粋な市場規模のみならず、消費者の数、すなわちゲームユーザーは増加し続けている。
 一方、日本の人口は、2000年からは伸び悩み、2010年以降は減少に転じている。それにもかかわらず、ゲームユーザーは増加し続けているのだ。
 なぜ、右肩上がりの市場の成長が維持されたのか。
 和田洋一氏(元スクウェア・エニックス代表取締役社長)の指摘にもあるが、ゲーム市場では「スペースインベーダー」以降、幾度も産業構造をまるごと変えるような技術革新が起こっているのに、旧世代の技術に属する製品が消滅しない状態が続いているのが、その理由だ。
 ゲーム市場は特殊で、技術革新が起こったとしても、旧世代の技術に属する製品が新技術に覇権を譲り渡すことはあれど、消滅しないで残り続けることが多い。
 2020年現在、最新の技術に属するモバイルゲームが市場の中核を形成している。しかし、コンシューマゲームは依然としてその存在感を示し、PCオンラインゲーム、アーケードゲームもまた、市場に残存している。
 ゲーム市場において最も早くに誕生したアーケードゲーム市場は、コンシューマゲーム市場が誕生しても駆逐はされず、モバイルゲームが市場を席巻した後も残存している。
 結果として過去45年にわたって、新技術が普及しても、旧技術に属するカテゴリが市場に残存し、複数の地層を形成することによって、ゲーム市場全体としては右肩上がりの成長を続けてきた。

ゲーム市場の特殊性2:代替品が存在しない

 ゲーム市場の特殊性。その2つ目は、原則として代替品が存在しないことだ。
 たとえば、ビール。ヱビスビールしか飲まない、という人も中にはいるかもしれないが、仮にヱビスビールがなくても、プレミアムモルツで満足する人は多いだろう。
 たとえば乗用車。生活や用途に合わせたタイプを念頭に置いて、その中から複数のメーカーで比較検討をすることが多いと思う。その他の業界でも、近い価格帯、似た機能を備えた商品をならべ、消費者が比較検討可能な状態を作り出していることが多い。
 しかし、ゲームはどうだろうか。「ドラゴンクエスト」の代わりは、「ドラゴンクエスト」しかない。「Fate」の代わりは、「Fate」しかない。
 ゲームは、その価値が消費者の心の中にしかない、特殊な嗜好品である。

ゲーム市場の課題

 そんなゲーム市場だが、現在、負けられない博打のような業界になってしまっている。業界が抱える課題は大きく4つ挙げられる。

課題1:競合タイトルの増加
 スマホゲームの市場は依然として成長を続けているが、過去に運営を開始したタイトルがセールスランキングの上位を占める傾向が続いており、新規タイトルがセールスランキング上位に食い込むのが難しい状況にある。
 一方、海外資本のスマホゲームが数多く上陸しており、競合の数は増加傾向にある。産業全体の市場規模は拡大し続けているものの、競合タイトルも増殖し続けている状況である。

課題2:開発コストの増大
 ゲーム開発の規模自体も拡大傾向にあり、コンシューマゲーム(家庭用ゲーム)においては、10億円以上の開発規模というのはざらだ。

課題3:ランニングコスト
 アーケードゲーム、スマホゲームにおいては、継続したサービス提供が前提であり、運営をするためのランニングコストが少なからずかかってくる。月々の収支がトントンならまだいいが、もし月々の収支が赤字に転落すると、果てしなくキャッシュアウトし続けるというリスクを抱えた恐ろしいシロモノになっている。

課題4:情報爆発
 インターネット普及以降、メディアが無数に誕生することが可能になった。このあたりから情報爆発と言われるようになったが、SNSの誕生と成長により更に情報量は極大化した。
 もはや、人類が処理可能なレベルに情報量が落ち着くことはあり得ない。
 発信した情報が埋もれてしまうリスク、消費者に気づいてもらえないリスクが日に日に拡大しているのだ。

結論:ユーザー・コミュニケーションは分単位で設計せよ

 消費者に情報を届け、最終的に対価をお支払いいただかないことには、あらゆるゲームはペイしない。消費者にゲームの情報を届けるために、消費者とゲームタイトルの対話を企むのが、筆者の仕事である。
 結論から言うと、現代の状況下において、ユーザー・コミュニケーションは分単位で設計を行う必要がある。毎分、すさまじい情報が生産され、消費されていく。そのような中では、分単位で消費者とコミュニケーションをし、彼らを楽しませることを考えないと埋もれてしまう。

 代替品がないものを、負けられない勝負という前提で、瞬発力高く知らしめ、愛着を持ってもらい、(運営型のゲームであれば)末永く楽しんでもらう。そのために書かれたのが、本書だ。
 本書が少しでも、皆さんのビジネスの役に立てれば、望外の幸せである。

『伝え方は「順番」がすべて』はじめに より一部抜粋・再編集しました。次回は、よい口コミを連鎖・拡散してくれる「受容者」という存在について解説します。お楽しみに!


『伝え方は「順番」がすべて』本文公開 記事一覧

1.「FGO」等人気ゲームの背後に必ずいる”宣伝屋”が「伝え方」の極意を公開!
2.開発費10億円超のゲーム市場で勝ち続けるための「伝え方」とは?
3.ターゲットを絞るのはNG!良い口コミを連鎖・拡散させる「受容者」の探し方
4.どうしても情報を拡散させたい人へ!「現代で唯一ほぼ確実な伝え方」の話

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