どうしても情報を拡散させたい人へ!「現代で唯一ほぼ確実な伝え方」の話
こちらの記事より全6回にわたり、『伝え方は「順番」がすべて』(小沼竜太・著)の本文を抜粋してご紹介します!本書は「Fate/Grand Order」や「ペルソナ」シリーズなど人気作のプロモーションに携わる〝ゲームの宣伝屋〟が「伝え方」の極意を明かした一冊。※詳細はこちらの記事を…。
今回は著者が実際に行っている「現代で唯一ほぼ確実な情報の伝え方」のお話。著者の小沼さん曰く、SNSが発達した現代では「体感的には”分単位”で情報の価値が蒸発していく」とか。ユーザー・コミュニケーションを成立させるための「現段階での到達点」をご紹介します。
価値ある情報ほど瞬時に拡散され、急速に価値を失う
極度に発達を遂げたのが、Twitter を始めとするSNSである。
人々がスマートフォンを介して、常時インターネットに接続し、SNSを利用するようになったことで、情報の伝達速度が劇的に上昇した。
価値のある情報が、瞬時に拡散されるようになったのだ。
その一方で、情報の価値もまた急速に失われていくようになった。SNSを通じての情報の拡散・消費のスピードはかつてない速さで、一瞬で広まるが一瞬で価値を失う。体感的には「分単位」で情報の価値が蒸発していく。
現代で唯一ほぼ確実な情報の伝え方
情報の拡散速度が上昇していることについて、異論を挟む人はもはやいないだろう。一方、一度公開された情報の価値は急低下し、顧みられることが少なくなった。「人の噂は七十五日」という諺は、スマートフォンもSNSもなかった時代の感覚に基づいている。もはや、七十五日どころか、「一日」噂が持つかどうかも怪しい。届けたい情報は、適切な強度を持って届けないと、情報の海に埋没し、気づいてもらうことすらできない。
よって、価値ある情報を公開する際、コミュニケーションの口火を切り成功させるためには、情報価値が新鮮なうちに最大限の拡散を狙うことが望ましい。
そのために、筆者は実際に、分単位でプロモーションの施策を設計している。
これを「in Minutes Operation」と呼んでいる。
プロモーションを1分単位で設計、実行
「in Minutes Operation」を実行する際、重要なのは文字通り1分単位のスケジュールを綿密に立て、正確に実行することだ。筆者は実際に、以下のようなアクションを分単位で順序立てて、正確に実行している。
・プレスリリース(ニュースリリース)の配信
・ニュースメディア等での記事露出
・WEBサイトの更新
・Twitter 等のSNSサイトへの投稿
・YouTube 等の動画プラットフォームへの動画公開
・TVCMのオンエアタイミング
・ライブストリーミング等の番組(での言及)
・雑誌や新聞、屋外広告の出稿
何かが孤立しないように、意味なく先行しないように、消費者に情報を届ける上で、コンテクストが連続した状態を維持するために、適切に順序を設計する。それを1分単位で設計し、実行する(場合によっては秒単位のこともある)。
勝敗を分ける「リアルタイム」と「順番」
TVCMやライブストリーミングと書いたが、「in Minutes Operation」はまさしくこうしたリアルタイムのメディアを利用する時に相性の良い考え方であると思う。
過剰な情報の波に負けないようにする上で、情報発信を「リアルタイム」で行うという視点は非常に重要だ。「リアルタイム」である時点で、他の「リアルタイムではない」情報と比べて優先して摂取する理由が生まれるからというのが一つ。
もう一つの理由は、「リアルタイム」で得た情報に対するリアクションを「リアルタイム」にシェアすることが当たり前の世の中になっているからだ。ライブストリーミングを見ながらSNSでシェアをするという視聴方法はもはや当たり前過ぎるほど当たり前になっている。
筆者は常に、TVCM、ライブストリーミング、屋外広告、WEBメディアなどを組み合わせて、「in Minutes Operaton」の観点からプロモーションを設計することにしている。
しかし、「in Minutes Operation」で重要なのはメディアの組み合わせではない。アクションの順番である。
一瞬で最大の広がりを作る「in Minutes Operation」
商品とユーザーのコミュニケーション――、その鍵を握るのは、商品が有する情報をどうユーザーに伝えるか、にある。そして、情報の価値は、公開と同時に拡散力という点で失われてしまう。
だからこそ、アクションの瞬間(情報公開の瞬間)に最大の広がりを作る必要がある。
あらゆるアクションを1分単位で、実施の順番を含めて設計する。そして、それを正確に実施する。筆者が実施するコミュニケーションにおいては必ずこれを徹底しているし、会社のメンバーにも徹底をさせている。協力するクライアントにも理解をいただき、必要に応じて実施のサポートを徹底して行うことにしている。
実行に際しては全関係者の意識統一が必須だ。
あくまでさわりだけだが、たとえば、全くの新作のゲームを電撃的に告知し、話題にするための「in Minutes Operation」は以下のようになる。
○月○日
17時59分 WEBサイト公開
18時 TVCM放映
同時刻 発表及びサイトオープンについてツイート
同時刻 外部メディアにおいて一斉記事公開
18時2分 施策Bのオペレーションを開始
実際に実務に携わっている方ならわかるかと思うが、ここで重要になってくるのは、複数の部署・機能の分単位での連携である。
異なるチーム、組織を分単位で有機的に連携させることこそが肝だ。
条件はゲーム業界以外の人も同じ
「in Minutes Operation」は、筆者が行っているユーザー・コミュニケーションを具体的に成立させるための(現段階での)到達点・解である。
「誰に」「何を」「どのように」伝えるのか? 既存の概念にとらわれずユーザーと真摯に向き合う時、真の対話が可能になる。
「in Minutes Operation」自体は筆者がゲーム業界で生き残るために生み出した手法だが、そのポイントは他の業界の方にも共通するのではないかと考えている。
仮に分単位のプロモーションがなじまない業界であっても、インターネットが当たり前に存在し情報爆発が起こっている現代では、誰しもが同じ条件下に置かれている。
ユーザー・コミュニケーションはゲーム業界の専売特許ではない。
実際、「in Minutes Operation」をゲーム業界外で提案し、実施してみたことがある。ゲームとは似ても似つかない、オンライン教育の業界であったが、結果は明白であった。
このことからも、少なくとも本書で述べてきたユーザー・コミュニケーションの原則に則り、適切に運用がなされるのであれば、どの業界でも、通用する手法だと考えている。
『伝え方は「順番」がすべて』より一部抜粋・再編集しました。次回はロールプレイングゲーム(RPG)ファンならご記憶にあるかも…という2010年の「JRPG宣言」について。かつて日本製RPGに世界的逆風が吹いていた時代があり、それを逆手にとって情報発信したのが、著者が所属するゲーム会社でした。次回はその舞台裏をご紹介します。お楽しみに!
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