2022年11月の記事一覧
「共感」は国際商取引における基軸通貨のようなもの――エンタメ小説家の失敗学40【最終回】 by平山瑞穂
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第7章 “共感”というクセモノを侮ってはならない Ⅴ一人称視点の作品
なお、「共感」ついでに、もうひとつ別の作品についても軽く触れておきたいと思う。二〇一三年三月に小学館から刊行された『ルドヴィカがいる』である。刊行順としては、前回の『僕の心の埋まらない空洞』の次に出た本だが、こちらは文芸誌『きらら』での連載を経て単行本化されたものだ。
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「小説を読めば、なんらかの共感が得られるはず」という当然の前提――エンタメ小説家の失敗学39 by平山瑞穂
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第7章 “共感”というクセモノを侮ってはならない Ⅳ「共感できない」は「つまらない」?
だから、発売後、「共感できなかった」という感想が続出したとしても、そのこと自体は問題ではないはずだった。そもそも、共感されることを期待していたわけではないのだから。しかし先に述べたように、一般読者にあっては、「共感できない」は実にしばしば、イコール「つまらな
共感を得ようとはまったく思っていなかった――エンタメ小説家の失敗学38 by平山瑞穂
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第7章 “共感”というクセモノを侮ってはならない Ⅲ納得できないタイトル
なお、この小説の原稿には当初、『グリッター』というタイトルがつけられていた。グリッター(本来は「輝き」の意味)とは、琥珀の標本の内部にときどき見られる、白く輝く亀裂のようなもののことを指している。樹液が地中で化石化する際、もともと樹液に含まれていた気泡が地熱で膨張し、周囲
「エロい! ――平山さん、それすごくエロいですよ!」――エンタメ小説家の失敗学37 by平山瑞穂
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第7章 “共感”というクセモノを侮ってはならない Ⅱ
不意に湧いてきたイメージ
思いのほか混み合っていた店内で、アイデアは順調に迸り出てきた。
「ストーカー殺人の容疑者が、対象である女性に執着する心理を、本人視点で赤裸々に綴る」という、僕が開陳した腹案を叩き台にしながら、設定は着々と膨らんでいった。その容疑者は妻帯者であり、執着していた女性と