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いろんな肉をぬか漬けにする日々|パリッコの「つつまし酒」#163

「ぬかチューブ」との出会い

 最近、自家製のぬか漬けをつまみに飲むのにハマっています。
 といっても、ぬか床を用意して、毎日かき混ぜて手入れをして、ということではないんです。ではどうしてるかというと、先日、スーパーで割引になっていて、何気なく買ってみた「ぬかチューブ」という商品。

「ぬかチューブ」

 これ、まさに商品名どおりで、チューブ状のぬか漬けの素なんです。食品用ポリ袋に入れた野菜100gに対して25gを目安に絞り出して加え、袋をよく揉んで全体に馴染ませたら、あとはほっておくだけでぬか漬けになっているというお手軽なアイテム。前日の晩に仕込んでおけば、翌日晩酌をするころには、ちょうどいい具合にぬか漬けが完成。
 僕、これまで何度かぬか床に挑戦し、つい手入れをおこたってダメにしてしまったことがあり、もう、自家製ぬか漬けに関してはあきらめていたんですよね。そこに現れた救世主こそ、このぬかチューブ様というわけで。

夏の夕方のぬか漬け&チューハイ最高!

 ところでこのぬかチューブ、ぬか床と違って食材を単体で漬けられるので、たとえば動物性のものなんかも気軽にぬか漬けにできる。実際パッケージには「うずらのゆで玉子」がおすすめの食材だなんてことが書いてある。そこで、ゆで玉子とか、チーズとか、ささかまとか、そういったものを興味本位で漬けてみたんですが、どれもこれもうまいんすわ。そこからさらに発展し、先日、ポークソテー用の豚肉をぬか漬けにしてみたんですね。

こんなふうに

 お肉のぬか漬け、あんまり聞いたことないけど、さてどんなもんかな〜と、翌日、しっかりとぬかに漬かった豚肉をさっと水洗いして水気を拭きとり、グリルでソテーしてみました。

豚肉のぬか漬けを
焼く!

 するとこれがびっくり! まず、肉が驚くほどに柔らかくなってるんです。ナイフとフォークでカットしようとすると、勝手にほぐれるくらいの感覚。
 さらには、なぜかものすごくジューシーで、特に脂身の部分なんか、ハンバーグでもないのに、ナイフを入れると肉汁がプシュッとあふれだす始末。
 で、肝心の味はというと、しっかりと塩気が効いて、しかもぬか独特の香りと風味が豚肉の旨味と融合し、ただ焼くよりもだんぜんお酒がすすむ!

自重でたわむほど
そして、箸でもほぐれそうなほどの柔らかさ

 いや〜発見でしたね。豚肉のぬか漬け、めちゃくちゃ美味しいじゃん! と。となれば、他にもあれこれ、肉のぬか漬けを作ってみたくなるのは当然のこと。
 そこで、スーパーで見つけた気になる肉を片っ端からぬか漬けにしてゆく、僕の「肉のぬか漬け」ライフが始まったというわけなんです。

いろんな肉をぬか漬けに

・鶏もも
・豚タン

 ここからはどんどんいきますよ。まずは鶏ももと豚タンから。

鶏ももと豚タンを
ぬか漬けにして
さっと洗い
鉄板焼きに
もう美味しそう

 鶏ももは、ぷりっぷりのふわっふわで、とても鉄板でてきとうに焼いただけとは思えないクオリティーです。身が厚いので塩気やぬかの風味がちょうどよく、なんの文句もつけようがないほどに美味しいな〜。
 豚タンは、ぷりっと心地よい歯ごたえがありつつ、ものすごくジューシー。ぬかの風味によって珍味度が増していて、これはヤバい酒のつまみですよ。

ぬか風味なので、七味も合う!

・牛ステーキ肉

続いてはこちら

 半額近くに割引されており、さらに僕のジャーナリズム精神のおかげでギリギリ手が出ましたが、なんと元値、100gあたり950円の高級牛肉!

これまた鉄板焼きに
いい感じのミディアムレア加減で焼けましたが

 最高潮に高まる期待のなか食べてみると、う〜ん、まずもって、もとの牛肉の旨味がすごすぎる。なので、純粋にそれを味わいたい。そういう意味で、ぬかの風味は不要かもしれない。それから肉の柔らかさ。これも、食べなれぬ高級肉なので、ぬか漬けにした効果なのか、もとからなのかがわからないくらい柔らかい。
 つまり、こんなにいい肉に関しては、そのまま焼いて食べたほうがよかったという結論に。

まさかの豚トロ超えが⁉︎

・鶏むね
・ソーセージ
・豚トロ

 続いてはこちらの3種。

ジューッ!
はい焼けた〜

 僕はとかくパサパサしがちな鶏むね肉に関して、どのように調理すれば柔らかくジューシーになるかを人知れず研究する者でもあります。その立場から言わせてもらえば、ぬか漬けはかなりの効果あり!
 味がシンプルだからこそぬかの風味もほどよく、肉のぬか漬け界の優等生的食材と言えましょう。
 続いてソーセージ。こちらは打って変わって、あまりぬか漬けの効果を感じませんね。もともと燻製の風味もついてるし、塩気もしっかりとあるので、言われなかったらぬか漬けにしたと気づかないくらいかも。1日でなく、もっと長期間漬けてみるとまた変化があるのかもしれませんね。
 そして豚トロ! こいつがすごかった! 僕の大好きな豚肉の旨味とぬかの風味が融合し、えも言われぬ妙味なのに加え、豚トロらしいジューシーさもまた爆発している! 肉のぬか漬け、どちらかといえばおつまみ方面に威力が増すと思い込んでしまってたんですが、これはごはんにもすごく合いそうだぞ。というわけで、思わず追加でごはんをよそってきちゃいましたよ。

至福……

・牛ホルモン
・牛レバー

今回の検証はひとまずこれで最後。とはいえ、豚トロ超えはもう出ないんじゃないかな〜……とは思いつつ、見るからに新鮮な国産の牛ホルモンと牛レバーを。

そのまま焼いても絶対にうまいけど
ぬか漬け焼きに

まずは牛レバー。あ、これはなんとも普通だな〜。レバーって独特のまったり風味こそが美味しさだと思うんですが、そこにぬかの味がなくてもいいっていうか。今後、レバーをぬか漬けにするのはよしとこうかな……。

大トリの牛ホルモン

で、牛ホルモンなんですけどもね。これがあなた、まさかの豚トロ超え! やべー!
 なんていうんでしょう。ホルモンの甘い脂とぬかの風味が融合し、どこか高級チーズを思わせるような風味になってるんです。で、もちろんジューシーさも大爆発。肉をぬか漬けにするなら、赤身系よりも脂たっぷり系なんだな。
 せっかくの脂を無駄にしないために一緒に焼いたキャベツもうっとりする美味しさで(考えてみれば僕はキャベツのぬか漬けを炒めて食べるのも大好きなんで当然だ)、今回検証したなかでだんぜん1位は、牛ホルモンに決定!
 騙されたと思って、あなたも漬けてみませんか? 牛ホルモンをぬかに。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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