光文社新書
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「日本語が不安」「英語にも自分にも自信がない」……英語で教育を受けた学生に何が起きているのか?:新刊『英語ヒエラルキー』が描く現実|佐々木テレサ、福島青史
(2)入学後――英語ヒエラルキーの世界での苦悩
1.英語環境の過酷さ――英語による承認の崩壊
EMI実施学部に対する期待と、英語能力に対する自信を持って入学した彼らであったが、実際に入学した後の振り返りでは、〈英語で苦労した〉〈英語が分からない〉〈授業が理解できない〉といった言葉によって、英語環境の過酷さが語られている。
帰国子女ではなく、入学以前の海外経験もない、のぞむ、あすか、じゅんは、
日本の裸体芸術|馬場紀衣の読書の森 vol.49
羞恥心の歴史を分析したハンス・ペーター・デュルによれば、日本の社会において裸体は見えているのに見てはいけないもの、らしい。日常的に見る機会は多いのに、じっと見てはいけない。たとえ見たとしても、心に留めてはいけない。それって、すごく難しい。じっと見ることは不作法にちがいないけれど、あるものを、ないように振る舞うなんてちぐはぐだ。でも、このちぐはぐが日本ならではの裸体芸術を育んだともいえる。
本書に
頭上運搬を追って|馬場紀衣の読書の森 vol.48
人間て、美しいな、と思った。
若いとか、痩せているとか、目が大きいとか。美しいとされる規格は無数にあるけれど、そのどれともちがう、ほんとうの意味での美しさ。人が生きて、生活があって、労働のなかから生まれてきた生身の動作である。厳しくて強い、人間の姿を正面切って見つめる作者の目もいい。
「頭上運搬」というのは、言葉のとおり頭の上でものを運ぶこと。今のように自動車などでものを運べなかった時代、人が両
なぜ「分子生物学」が希望をもたらすのか?|高橋昌一郎【第23回】
ゲノム医療の重要性と懸念最新作『天才の光と影:ノーベル賞受賞者23人の狂気』(PHP研究所)を上梓したばかりである。この作品では、とくに私が独特の「狂気」を感得したノーベル賞受賞者23人を厳選して、彼らの数奇で波乱万丈な人生を辿っている。
一般に、ノーベル賞を受賞するほどの研究を成し遂げた「天才」は、すばらしい「人格者」でもあると思われがちだが、実際には必ずしもそうではない。どんな天才にも、輝か