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空前の「家もんじゃ」ブーム!|パリッコの「つつまし酒」#161

目から鱗のレシピに出会う

 地域差などによっても違いはあると思いますが、東京出身である僕の考える「三大粉もん」は、お好み焼き、たこ焼き、そしてもんじゃ焼きということになります。
 このうち、お好み焼きとたこ焼きは家でもけっこう作る。けれども、もんじゃ焼きだけはほぼ作らない。というのも、はるか10年以上昔、思い立って何度か作ってみた際、あんまりちゃんとレシピなどを調べず、「要するに小麦粉を水で溶いて具と味を加えて焼けばいいんだろう」なんて、ナメた態度で挑んでしまったんですね。そしたら当然のことながら、なんだか味がぼんやりしていて、これならお好み焼きやたこ焼きのほうがいいや〜、なんて結論づけてしまったんだったと思います。しょうもない。
 ところが先日、なにかのアニメに出てきたのか、娘が突然「もんじゃやきがたべたい」と言いだしました。え? お子さんなのにあんな渋いもんが食べたいの? まぁでも、昔から駄菓子屋なんかでおやつとして提供されてきた歴史もあるしな。と、その夜作ってみることにしたんですね。
 そこであらためて検索してみたところ出会ったのが、目から鱗の絶品&超絶シンプルレシピだったんです。な〜んだ、もんじゃ焼きってこんなに簡単で美味しかったんだ、と。それ以来なんだかハマってしまい、今の僕、空前の「家もんじゃ」ブームのまっただなかにいるんですよね。
 あ、ちなみに肝心の娘は、そもそも食べ慣れないものをあまり食べてくれないので、ひと口だけ食べて残してました。

基本の作りかた

僕なりに調整したレシピをざっくりと説明すると、

1)市販の「お好み焼き粉」か「たこ焼き粉」を用意する
2)粉に対して10倍の重さの水と、お好きな食用油少々(これはなんとなく)を加えて混ぜる
3)刻んだキャベツおよび好きな具材を加えて焼く
4)最後にウスターソース少々で味を調整

と、こんな感じ。簡単でしょう? ポイントはやはり「『お好み焼き粉』か『たこ焼き粉』を使うこと」で、もともとの粉にだしや下味が含まれているので、難しいことはなんにも考えなくても勝手に美味しいもんじゃ焼きができてしまうというわけなんです。
 しかも、きちんとホットプレートを用意して、専用のヘラを使って、まずは土手を作って……なんてこだわりも、面倒だと思ったら省いてOK! 僕なんか基本、フライパンで炒めもの用のヘラで作っちゃってるし、水と粉もフライパンで直に混ぜちゃってるし、キャベツはコンビニで買ってきた千切りキャベツだし、と、手抜き三昧。それでも最後はちゃんと美味しいもんじゃ焼きになり、それをキッチンで立ったまま、缶チューハイのつまみにするのがもうね、たまらないんです!
 ちなみに分量としては、粉15gに対して水150mlくらいが1人前にちょうどいい感じかな。そこだけはきっちりと、キッチンスケールなどで計りましょうね。

混ぜるのも雑なら
キャベツの量も雑
それでも強めの火で焼いてるとすぐにとろとろになってきて
定番の紅しょうが&ベビースターなど投入し
ざっくり混ぜながら焼いていれば
美味しそうなおこげが出現!

ね。本当にこれだけなんです。レシピには「ウスターソースで味を調整」と書きましたが、紅しょうがやベビースターを入れるならば、味はそれでじゅうぶん。あとはお好みでしょう。別にそこで、醤油やめんつゆやマヨネーズを入れたっていいだろうし。
 ちなみに、お好み焼き粉とたこ焼き粉の違いについても、一応両方作って食べ比べてみました。お好み焼き粉のほうが若干まとまりやすくあっさり味。たこ焼き粉はとろみ感が強めでしっかり味。なので、気軽に作ってぱぱっと食べたいならお好み焼き粉、のんびりと焼きながらつまみにしたいならたこ焼き粉。というのが個人的な印象でしたが、メーカーの違いや細かい水分量、火加減などによっても変わってくるだろうし、まぁ誤差の範囲かと。なので、好きな粉や、そのときに安かった粉などを選べばけっこうかと思います。

アレンジも自由自在!

最後にせっかくなので、ここ最近作ってみたアレンジもんじゃを3品ほどご紹介。
 まずは王道「明太チーズもんじゃ」!
 もんじゃ焼きって、お店で食べると、材料ほとんど粉とキャベツと水なのに1000円くらいすることもあって(いや、もちろんお店ならではの味でその価値はあるんですが)、さらにそこへトッピングを加えようとすると、1種類につき2、300円が加算されていったりして、けっこう高級な食べものになってしまう場合も多いですよね。
 ところが自宅ならば、スーパーで買ってきた好きな食材を入れ放題! 基本のもんじゃに、明太子もチーズもどっさりと入れてやれ!

明太子たっぷり
チーズもたっぷり
美味しそう!

あとはいつもどおりに焼くだけで、おおお〜! 生地にまんべんなく行き渡った明太子のつぶつぶ感と塩気、とろ〜りチーズのまったりとしたコク。こりゃあ贅沢な味だ。家もんじゃの新たなる地平だ!
 続いて、カレーもんじゃが定番ならば、「タイカレーもんじゃ」なんてどうでしょう?

久しぶりに引っ張り出してきたミニホットプレートで、ひとり家もんじゃがますます楽しい

まずは、レシピより若干水気を控えめにもんじゃを作ります。ただし、辛味も味も強い紅しょうがは、今回は抜きで。そこに登場するのが、いなばの缶詰「チキンとタイカレー グリーン」。

もはやおなじみ

そう。水気を控えめに作っていた理由は、カレーにも汁っけがあるから。こいつをもう、ドバーッと豪快に、もんじゃに加えちゃいましょうか。

ドバーッと
鶏肉、こんなにたくさん入ってたっけ
焼きあがり!

いやはや、このグリーンカレーもんじゃがですね、「なるほど、たまにはこういうのもありだよね」とかいうレベルじゃなくて、本気でめちゃくちゃうまかった!
 もんじゃ自体がプレーンで、そこにグリーンカレーの味が加わるんだから、そりゃ間違いないんですが、とろりとクリーミーで、だけど味はグリーンカレーで、ずっと熱々だから辛さもしっかり。なにより、ふだんならすぐに食べ終わってしまうグリーンカレーの味を長くちびちびとおつまみにできるという点が大発見。タイにこういう料理がないのが不思議なくらいですよ。いや、僕が知らないだけであるのかな? こちらのもんじゃは、お好みでほんの少しナンプラーを足してもいいかもしれません。
 さて、最後はもっと冒険してみましょう。ベビースターのかわりに冷凍のチャーハン、キャベツのかわりに刻みネギ、そこに容赦なくひき肉を加えた、「チャーハンもんじゃ」だ! なんとなく、中華料理屋にたまにある「肉あんかけチャーハン」風になるんじゃないかな? と予想しているんですが、はたしてどうなるか。

いきなりなにを作ってるんだかわからない風景

まずは鉄板で、ひき肉と冷凍チャーハンを炒めます。火が通ったらそこに、もんじゃ液とたっぷりの刻みネギを投入。

さてどうだ!?

食べてみた感想はというと……すみません、ちょっと派手に攻めこみすぎました。これ、ぜんぜんもんじゃじゃないや。強いていうなら、「なんでもよ〜く混ぜて食べるのが好きな人が食べてる、肉あんかけチャーハン」だ。
 素材の組み合わせから考えれば当然でしたね。まぁ、これはこれで美味しい料理だったからぜんぜんいいんだけど!
 というわけで、我が家のミニホットプレートと、僕のチャーハン熱、しばらく冷めることがなさそうです。

パリッコ(ぱりっこ)
1978年、東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーター。2000年代後半より、お酒、飲酒、酒場関係の執筆活動をスタートし、雑誌、ウェブなどさまざまな媒体で活躍している。フリーライターのスズキナオとともに飲酒ユニット「酒の穴」を結成し、「チェアリング」という概念を提唱。2021年8月には、新刊『つつまし酒 あのころ、父と食べた「銀将」のラーメン』を上梓! また、『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』(スタンド・ブックス)『晩酌わくわく! アイデアレシピ』 (ele-king books)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社新書)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、『晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生』(シンコーミュージック・エンタテイメント)、漫画『ほろ酔い! 物産館ツアーズ』(少年画報社)、など多数の著書がある。
Twitter @paricco

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