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僕という心理実験 妹尾武治

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『未来は決まっており、自分の意志など存在しない。~心理学的決定論』が熱狂的な反響を巻き起こした妹尾武治さんによる心理学エッセイ。前著の内容をさらに深めた世界は、多くの読者の共感を… もっと読む
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#心理学

大丈夫。僕たちが幸せになることは はじめから決まっているよ―僕という心理実験32 妹尾武治

大丈夫。僕たちが幸せになることは はじめから決まっているよ―僕という心理実験32 妹尾武治

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90年代からの20年ほど、心理学者は脳に憧れた。NCC (Neural Correlates of Consciousness)は、心をモノで語る夢を心理学者達に見せた。2000年はまさに“ルネッサンスジェネレーション”の幕開けだった。

外の世界には客観的事実、エビデンス・データ・モデルがある。少なくともそれで語り尽くせるように見える世界があった。

だが、人間はクオ

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生命・存在の本質が「情報」なら、身体は不要?―僕という心理実験28 妹尾武治

生命・存在の本質が「情報」なら、身体は不要?―僕という心理実験28 妹尾武治

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第3章 愛について②――かなり“笑い”ができるAI爆笑は無理でも、クスッとはなるだろう。今、AIはかなり“笑い”ができる。

世界各地で、笑いを学習させ面白く答えさせるアプリ・SNSアカウントが存在する。膨大な数の大喜利のお題とその回答、そして人間がつけたその評価値を学習させる。すると始めてのお題に対しても、彼らは的確に答えられるようになる。ちなみに、劇場の漫才師の声と、

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笑いとサルのマウンティング行為の関係―僕という心理実験27 妹尾武治

笑いとサルのマウンティング行為の関係―僕という心理実験27 妹尾武治

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第3章 愛について①――笑いと孤独志村けんと北野武

志村けんが、生前のインタビューで「どうしてコント一筋でずっと笑いを続けられるのですか?」という質問に対して以下のように回答している。

ある母子家庭の親子から一通の手紙が届いた。「志村さんのコント番組の1時間が、1週間で1番の救いになっています。コント番組を見ていれば、少なくともその1時間は辛いことを忘れられ、そして次

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動物とセックスをする人間(動物性愛者)―僕という心理実験26 妹尾武治

動物とセックスをする人間(動物性愛者)―僕という心理実験26 妹尾武治

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第2章 日本社会と決定論⑱―対等であろうとする努力濱野ちひろ『聖なるズー』

どこまでの多様性を認めうるのか。例えば動物とセックスをする人間、動物性愛者と呼ばれる存在はどうか? 人間が犬や猫といった動物と性交すること。異常な行為だと聞く耳を持たずに断罪し、自分から遠ざける人も多いだろう。

『聖なるズー』の著者、濱野ちひろは男性から10年にわたる暴力の支配を受けて来たこと

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人が人を食べること―僕という心理実験25 妹尾武治

人が人を食べること―僕という心理実験25 妹尾武治

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第2章 日本社会と決定論⑰―正義がないなら悪もない食人文化

人が人を食べること。映画『ヒカリゴケ』では名優、三國連太郎がその様を、異常な目で怪演している。極限状態の人間を、ここまで演じ切ることが出来る三國は天才だとしか言いようがない。不遇な幼少期(支配階層の男性による母の性的搾取と、救ってくれた育ての父親の被差別の辛苦)の経験が、この目の実現の背景にあったことが察せられる

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虐待してきた親、いじめ加害者に責任はないのか?―僕という心理実験23 妹尾武治

虐待してきた親、いじめ加害者に責任はないのか?―僕という心理実験23 妹尾武治

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第2章 日本社会と決定論⑮―犯罪者と人加害者の気持ちに寄り添う態度

成功者を黙殺するというのと全く同じロジックで、犯罪者をただ断罪する態度も新しい時代の人類は再考せねばならない。極端な危険思想に思われるかもしれないが、少しだけ話を聞いて欲しい。

虐待を受けて育った子供が大人になると、自分の子供に虐待をしてしまうリスクが高まる。虐待の連鎖と呼ばれる現象だ。

連続児童

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新しい平等とは、人間を能力で評価しないこと―僕という心理実験21 妹尾武治

新しい平等とは、人間を能力で評価しないこと―僕という心理実験21 妹尾武治

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第2章 日本社会と決定論⑬―本当の平等とは何か?親は選べない

「努力できることが才能だ」と落合博満、松井秀喜、イチローは言う。私はこう思う。「努力出来る分野を発見し、それに労力を集中出来る環境にいる」ということは「運」なのだと。努力は自由意志に裏支えされない。

ゴルフの松山英樹選手の父親は、日本アマ選手権に出場経験があるゴルファーだった。恵まれた体躯、施された英才教

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太っているのは自己責任か?―僕という心理実験20 妹尾武治

太っているのは自己責任か?―僕という心理実験20 妹尾武治

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第2章 日本社会と決定論⑫―「太りなさい」という環境からの刺激太っているのは自己責任だと多くの人は思うだろう。しかし、こんなにも美味しいものが身近に溢れているのも自己責任なのだろうか。ハンバーガー、コーラ、スイーツが低価格で手に入る時代。「太りなさい」という環境からの刺激がここまで多量にあるのに、太っているのは自己責任なのだろうか?

同じように、使えるお金を計画的に計算

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アダムとイブが食べた禁断の果実とは、自立的思考(心理学的決定論)だった―僕という心理実験18 妹尾武治

アダムとイブが食べた禁断の果実とは、自立的思考(心理学的決定論)だった―僕という心理実験18 妹尾武治

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第2章 日本社会と決定論⑩―ニュータイプの誕生新しい脳の中のOSとそのバグ

2021年11月にネイチャー・ヒューマン・ビヘイビアに掲載された論文では、英国バイオバンクと精神医学ゲノミクスコンソーシアムから得た現生人類の遺伝学的データ、およびヨーロッパ中から集められた古代ヒトゲノムDNAを用いて、ホモ・サピエンスの直近の3000年の進化について考察がなされている。

著者に

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かつて女性の40%ほどが狩猟に関わっていた?―僕という心理実験Ⅻ 妹尾武治

かつて女性の40%ほどが狩猟に関わっていた?―僕という心理実験Ⅻ 妹尾武治

第2章 日本社会と決定論④
スカイラブハリケーンと棒が見る瞬間――心理学的な脇道

“狩猟採集社会“というと、面白い論文が2020年の11月4日に、最高峰の学術誌であるサイエンスに掲載された。

狩猟採集時代の人類の遺跡では、埋葬された骨が見つかることがある。この骨と共に、石器が見つかるケースがままある。狩猟に用いたやじりなどである。現代の人でも「おじいちゃんが大事に使っていた帽子を一緒に棺に入

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自由意志の発明と歴史―僕という心理実験Ⅹ 妹尾武治

自由意志の発明と歴史―僕という心理実験Ⅹ 妹尾武治

第2章 日本社会と決定論②自由意志の発明と歴史

ここで自由意志の発明の歴史について、とても短く紹介したい。

自由意志と決定論は、その起源から社会と人との関係に基づいている。

もちろん諸説あるのだが、現在の日本人の多くが信じている自由意志は、西欧のキリスト教に根ざしていると考えるのが一般的である。

(本当に荒っぽくまとめて信者の方には失礼だが)全能の神という存在が、ユダヤ教以降の西洋的なキリ

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僕がやってきた科学的取り組み―僕という心理実験Ⅷ 妹尾武治

僕がやってきた科学的取り組み―僕という心理実験Ⅷ 妹尾武治

トップの写真:ビッグバン直後に誕生した最初の分子「水素化ヘリウムイオン」が発見された惑星状星雲NCG 7027 © Hubble/NASA/ESA/Judy Schmidt

妹尾武治
作家。
1979年生まれ。千葉県出身、現在は福岡市在住。
2002年、東京大学文学部卒業。
こころについての作品に従事。
2021年3月『未来は決まっており、自分の意志など存在しない。~心理学的決定論〜』を刊行。

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人間は、そして生命は情報である―僕という心理実験Ⅵ 妹尾武治

人間は、そして生命は情報である―僕という心理実験Ⅵ 妹尾武治

トップの写真:ビッグバン直後に誕生した最初の分子「水素化ヘリウムイオン」が発見された惑星状星雲NCG 7027 © Hubble/NASA/ESA/Judy Schmidt

妹尾武治
作家。
1979年生まれ。千葉県出身、現在は福岡市在住。
2002年、東京大学文学部卒業。
こころについての作品に従事。
2021年3月『未来は決まっており、自分の意志など存在しない。~心理学的決定論〜』を刊行。

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心理学的決定論とは何か?―僕という心理実験Ⅲ 妹尾武治

心理学的決定論とは何か?―僕という心理実験Ⅲ 妹尾武治

トップの写真:ビッグバン直後に誕生した最初の分子「水素化ヘリウムイオン」が発見された惑星状星雲NCG 7027 © Hubble/NASA/ESA/Judy Schmidt

妹尾武治
作家。
1979年生まれ。千葉県出身、現在は福岡市在住。
2002年、東京大学文学部卒業。
こころについての作品に従事。
2021年3月『未来は決まっており、自分の意志など存在しない。~心理学的決定論〜』を刊行。

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