大江健三郎とは何者だったのか。没後1年を機に考える|井上隆史
二〇二三年三月三日、大江健三郎がこの世を去りました。八十八歳でした。
東京大学でフランス文学を学んでいた学生時代の作品「奇妙な仕事」以来、常に文学界の先頭を走り続けた大江。一九五八年に「飼育」で芥川賞、一九六七年に『万延元年のフットボール』で谷崎潤一郎賞、一九七三年に『洪水はわが魂に及び』で野間文芸賞、一九八三年に『「雨の木」を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛次郎賞を受賞、そして一九九四年には、川端康成についで日本で二人目のノーベル文学賞受賞者となりま