『宇宙よりも遠い場所』の展開予想を行った南極観測隊員の話が光文社新書に!
皆さんこんにちは、元・光文社新書の藤です。
“元“と頭につけたのには訳がアリ、実は7/1付けで部署異動になりました。
…が、担当している新書が2冊ありまして、もうしばらく光文社新書noteを更新してまいります。よろしくお付き合いください…!
さて7月刊でイチオシ(担当書籍)!なのが、南極観測隊のお話です。
記事タイトルにありますとおり。
南極がテーマのアニメ『宇宙よりも遠い場所』の展開予想を、南極から行った南極観測隊員がいたってご存じでしょうか?
What? 『宇宙よりも遠い場所』って??
『宇宙(そら)よりも遠い場所』(通称・よりもい)は南極を目指す女子高生たちの奮闘を描いた大人気アニメです。詳細は下記、公式サイトを…。
タイトルは元宇宙飛行士の毛利衛さんが「(南極・昭和基地は)宇宙よりも遠い」とおっしゃった一言に由来するそう。(確かに宇宙には数分でたどり着けますが、南極には船で片道2週間ほどかかります…)
ストーリーはと申しますと、「それぞれの事情を抱えた女子高生たちが時にぶつかりつつも、互いを思いながら南極を目指す」という青春ドラマ。
ラストは感動の涙。名作です。
(視聴済みです)
綺麗な南極。でも美しいだけではない。(詳細は後述)
Why? 光文社新書とどんな関係が…?
実は『宇宙よりも遠い場所』と今回ご紹介する新書の著者さんには、ちょっとした関係があります。
『宇宙よりも~』の放送は放送は2018年1月~3月なのですが、その1か月ほど前。遥か南極の地で研究観測に従事していた、とある若き南極観測隊員のPCに、一通の宣伝メールが届いたのです。
✉「今度南極をテーマにしたアニメが始まりますよ!」
その南極観測隊員は「南極のアニメが始まるの?」と知るや否や、「南極の地で研究観測を体験している自分ならば、南極を扱うアニメの展開も予想できるはずでは…?」
と考え、
「というわけで放送が始まってしまうまえに、『よりもい』の展開やありそうな要素について予想していきたいと思います」
と、自らが運営する南極観測活動を綴るブログ上で突如、『宇宙よりも遠い場所』の展開予想をし始めたのです。現地・南極に居ながら、まだ見ぬアニメを、南極観測隊員のリアルな生活を基準に、です。
実際のブログはこちらです。
南極観測隊員によるアニメの展開予想(抜粋)
日本で放送予定の南極アニメに対して、南極現地にいる観測隊員が展開を予測し、南極現地からブログでアップできる時代…。すごいです。
下記に展開予想の一部を抜粋してご紹介します。
高校は中退している
大前提を覆すようですが、女子高生が女子高生の身分のままで南極観測隊に参加することは難しいでしょう。万が一参加できても同行者(隊員ではない)のはずで、現行のシステムがどうなっているのか詳しいところはよくわかりませんが、参加は夏期間に限定されてしまう可能性が高いです。しかし夏では明るすぎて、推しの要素であろうオーロラ回をねじ込めない。
となると、高校を中退させて越冬隊員として参加させるのが適当な気がします。中退してしまったら「女子高生」ではありませんが、まぁ元女子高生ということでひとつ妥協してもらうしか。
全員屈強なマッチョだ
当たり前ですが、南極は雪との戦いでもあります。
今回自分が行って来た場所はS17という観測拠点で、ここは基地でもないのに建物があるという珍しい場所なのですが、ここも最初に行ったときには天井まで雪に埋まっており、最初に扉と吸気・排気口のところを2m近く雪を掘るという労働をしなくてはなりませんでした。
そんな重労働、単なる女子高生ではなかなかこなせないはずです。であれば、全員屈強な肉体を持っているはずです。
ヘリオペがキャンセルになったために座って茶を飲んでいるだけの回がある
夏の間、沿岸から大陸に少し入った程度の場所であれば、基本的にヘリコプターで移動します。しかしながら航空機は悪天候に弱く、特に雲が出たり、地吹雪で地表面の状態がわからなくなると発艦せず、予定のヘリコプターオペレーション(ヘリオペ)はキャンセルされることとなります。この結果として、観測に出られなかったり、逆に観測から戻ってくる日が遅くなったりということも珍しくありません(*4)。
*4) なのでそれを前提にして装備・食料は持っていく。
『よりもい』はしっかりと南極のことを研究したアニメのはずです。であれば現実的な風景として、ヘリオペのキャンセルに見舞われて何もやることがなくなり、ただ茶を飲むだけの回もあるはずなのです。
リアルな南極。観測拠点は天井まで雪に埋まっており、扉と吸気・排気口のところを2m近く雪を掘るという労働からスタート。
こんな面白い南極観測隊員の方がいるんだ!
すべて南極での体験に基づいていますから、どの予想も納得です。
※実際のアニメの展開は…、ぜひ『宇宙よりも遠い場所』をぜひご覧ください!
南極の厳しい環境下で観測研究に勤しみながら、他方でこんな面白いことを考えてブログを更新する観測隊員さんとはどんな人なのだろう…? 興味が沸きませんか…?
その方こそ…、7月刊『南極で心臓の音は聞こえるか』(光文社新書)を執筆されました、第59次南極地域観測隊(越冬隊・気水圏一般研究観測)・山田恭平さんです!
山田さんは南極地域観測隊・越冬隊として1年4ヶ月を南極で過ごされました。その体験を綴っていただいたのが、光文社新書今月の新刊『南極で心臓の音は聞こえるか』です。
次回の記事から複数回に分けて書籍内容を先行公開いたします。
『よりもい』好きのかたも、南極に興味のある方も、ぜひチェックしてみてください。南極観測隊員の非日常的な日常が分かります…!
『南極で心臓の音は聞こえるか』本文公開 記事一覧
1.『宇宙よりも遠い場所』の展開予想を行った南極観測隊員の話が光文社新書に!
2.人間が地球を守る必要はない?『南極で心臓の音は聞こえるか』序文先行公開!
3.南極なのに…?昭和基地は「建設現場か砂漠の基地か」雪で覆われていなかった
4.「南極は暑い」って本当ですか?!南極大陸での観測活動
5.南極・昭和基地ってこんな感じです!鄙びたサロンとトイレ事情
6.南極の工事風景と越冬交代式(夜は蟹鍋パーティ)
7.今晩の皿洗いを賭けて…南極観測隊・チーム対抗バレーボール大会
8.南極からの情報発信「南極授業と南極教室と南極中継って、何が違うの?」
9.南極観測隊の海洋生態調査について(※釣り大会概要)