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南極・昭和基地ってこんな感じです!鄙びたサロンとトイレ事情【先行公開】

皆さんこんにちは!元光文社新書の藤です。
話題の7月新刊『南極で心臓の音は聞こえるか』(山田恭平・著)の一部を先行公開します!
『南極で心臓の音は聞こえるか』ってなに?という方はこちらの記事を…。
今回は観測隊員たちが夏の間寝泊まりする宿泊施設をご紹介します。昭和基地には夏期用の宿泊施設が2つあり、それぞれ「レークサイドホテル」「ヘリポートホテル」と称されるのですが…。実際のところは…ホテル…?? かなり年季の入った建物のようです。(ちなみに本記事トップ画像にある、宿泊施設内のサロンに貼られたポスターは若槻千夏さんだそうです)

昭和基地夏の宿泊施設

 昭和基地は南緯69度00分、東経39度35分に位置する。リュッツォ・ホルム湾と呼ばれる湾の中のオングル諸島にある東オングル島という島内にある。
 南半球なので季節が反転して夏となる12月から1月にかけての平均気温はマイナス1℃程度。最高気温はプラス5℃程度までは上がる可能性があり、最低気温でもマイナス10℃を下回らない程度が普通なので、そう低くはならない。湿度は屋外では70%程度あるが、これは気温の低さのためで、常温の室内だと10%程度となる。風速は秒速平均5m程度。ブリザードは夏の間に何回か出くわす。
 この場所は、少なくとも夏の間は雪と氷に包まれた静謐な空間ではない。力と技の風車が回る、砂と岩と鉄筋と生コンの空間だ。砂埃で咳き込む昭和基地の標高は約29mで海面は近く、夏はしばしばペンギンの姿を基地近くで見かけることができる。昭和基地の建物自体は、第1次では4棟しか存在しなかったが、隊次を重ねるごとに建設が進み、現在では68もの建物が存在している。夏の時期、昭和基地での宿泊場所は第一夏期隊員宿舎(一夏)と第二夏期隊員宿舎(二夏)がある。例外的に管理棟という越冬隊向けの施設に泊まる者もいるが、基本的には一夏と二夏のどちらかだ。

★★1-14-5_2018-02-20 15.45.39_一夏

★★1-14-3_2018-01-05 08.57.04_2夏

上写真:第一宿泊施設「レークサイドホテル」(通称・一夏)
下写真:第二宿泊施設「ヘリポートホテル」(通称・二夏)

 筆者は二夏に泊まった。
『ヘリポートホテル』という詐欺のような通称のある二夏は、その名の通り自衛隊のCHヘリが発着するAヘリポートの傍らにある。1990年(40次)で完成、翌1991年(41次)で増築された高床の建物で、40のベッド(1部屋2ベッド)を持っているほか、2箇所のサロン、および便所がある――ということになっている。
 二夏の部屋は二段ベッドの2人部屋、というか実質ベッドがあるだけで、「しらせ」の船室より狭い。1部屋がたぶん1.5畳くらいなので、それを2人で使うから1人1畳もない。「起きて半畳、寝て一畳」と言われるが、それ以下の暮らしということでなかなかに荒んでいる。
 サロンと呼ばれる共用空間は、これをサロンと呼ぶ度胸がすごいが、いちおうテーブルがあって、くつろげる空間にはなっているので談話室という意味なら間違っていない。木製のローテーブル、並ぶ背の低い棚、雑誌や漫画本、カップラーメン、ルービックキューブ、剣玉も置かれている。つまり古い共用部屋だ。お湯を作る給水機があるだけ近代的かもしれない。壁には若槻千夏のグラビアポスターが貼られており、福本伸行の漫画のような哀愁漂う。

★★1-14-4_2018-01-14 13.03.10_2夏サロン

いちおうテーブルがあって、くつろげる空間にはなっている二夏のサロン


 二夏には食堂がない。食べて寝るだけの空間だ。そのため朝食を摂るには一夏に向かわなければならない。ブリザードで外出注意令や禁止令が発令されると建物の外に出られなくなるため、このときに腹が減っていた場合はサロンに置かれている3年前に賞味期限の切れた食料を食べるか、坐禅を組んで無の境地に至ることで空腹を抑えるしかなくなる。
 トイレはあるが、三方を木の壁に囲まれた空間の中央に、漏斗のついたポリタンクが置かれているだけ。ションポリと呼ばれているこれがトイレだ。
これは外というのでは。
 ションポリという名前は、小便とポリタンクから来ているのだろう。もちろん大便はできない。女性用も、ない。腰の高さまでの木壁で囲われているとはいえ吹き曝しだ。夏期間の僅かな間だけとはいえ、この設備が学問研究の最先端である南極地域観測隊のトイレなのである。

★★1-14-6_2018-02-20 15.48.36_二夏ションポリ

二夏の外。赤い丸で囲んだ場所がトイレ


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