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南極観測隊の海洋生態調査について(※釣り大会概要)【新刊公開】

皆さんこんにちは!元光文社新書の藤です。
話題の7月新刊『南極で心臓の音は聞こえるか』(山田恭平・著)より一部を公開します!
『南極で心臓の音は聞こえるか』ってなに?という方はこちらの記事を…。
南極観測隊員のお仕事に一つに「海洋生態調査」があります。昭和基地周辺の海に生息する生き物を捕獲し、体長・重量などを記録。時に胃袋の中を開いて調べることもあるそうです。捕獲した魚は隊員で美味しく頂くんだとか。実際の捕獲の様子を書籍内よりご紹介します。

※今回で本文の公開はいったんおしまいです。ご興味持たれた方、ぜひ書籍をお手に取ってみてください…!

釣り大会

 寒くなりつつある5月だが、寒くなったことでできることもある。
 釣りである。
 いや違う、生態調査だ。日本の南極観測隊の釣りは、生態調査ということになっている。5月13日は生態調査大会であった。前日から餌や釣り用仕掛けの準備をしてある。
 今回の釣り大会は、東オングル島から北にある、名前がそのまま「北の浦」という海の上で開催された。
 南極での釣りは、北海道のワカサギ釣りに似ており、安全な分厚い海氷にドリルで穴を空け、そこに餌のついた針を垂らす。運が良ければ、針を落としてすぐに反応があるくらいに魚がいる。
 仕掛けは一般的な重り付きの仕掛けで、釣竿も小型の投げ釣り用の竿である。餌も特殊なところはなく、イカ、オキアミ、魚、蛸などだ。
 軽い反応があったので引き上げてみると、小型のハゼのような魚がかかっている。ショウワギスである。見た目がハゼと似ており、天麩羅にして揚げたりすると美味い。昭和基地付近で最もよく釣れるのがこのショウワギスで、前回の釣り……ではなく生態調査では午前午後合わせて20匹超の釣果があり、そのすべてがショウワギスだった。
 天候はそう悪くはないとはいえ、時たま風が通り抜けると寒い。椅子代わりにビールケースを持ってきており、氷上に直接尻をつけなくて済んでいるのは幸いだ。風を背にし、露出している顔が風に当たらないようにしながら当たりを待つ。寒い。クソ寒い。お上品に言うと、クソ寒いでございます、だ。しかしなかなかに釣果があるので、楽しい。

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楽しい海洋生態調査

 ところで釣りというか生態調査だが、第3章で見たとおり南極での生物捕獲については一定のルールが定められており、不用意に捕まえることはできない。この海洋生態調査は大丈夫なのか?
 実際のところ、条約で基本的に守られているのはペンギンやアザラシである。それ以外の海洋生物については、たとえば「南極の海洋生物資源の保存に関する条約」では、魚類や蟹、海老なども保存の対象にはなってはいるものの、あくまで「資源」としてで、保護の対象というわけではない。
 そういうわけで、釣り――すなわち魚類の捕獲は、法的には縛られてはいないのだ。
 しかしながら、法的に許可されていれば好き放題にして良いわけではないわけで、日本では「娯楽としての魚類等海棲生物の捕獲についてのガイドライン」を制定している。「釣りガイドライン」は魚類の捕獲規制はないが、相手は生き物なので常識的な範囲の捕獲にするよう定めているものだ。
 この釣り大会でも、釣った魚は捕獲日時や種類、捕獲場所、体長、重量などを記録し、大きい魚の場合は胃袋の中を開いて餌を調査する、ということもやっている。たとえば釣れたときに食べていたらしいゴカイのような(釣り餌ではない)虫が出てくることもあり、ショウワギスの主たる餌もわかる。最後には美味しくいただいている。

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調理され食卓に並んだショウワギス。美味しい


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