光文社新書

光文社新書の公式noteです。創刊は2001年10月17日。光文社新書の新刊、イベント情報ほか、既刊本のご紹介や連載をアップしていきます。お気に入りの一冊について書いていただいたnoteを収録するマガジン「#私の光文社新書」では、随時投稿をお待ちしています!

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光文社新書の公式noteです。創刊は2001年10月17日。光文社新書の新刊、イベント情報ほか、既刊本のご紹介や連載をアップしていきます。お気に入りの一冊について書いていただいたnoteを収録するマガジン「#私の光文社新書」では、随時投稿をお待ちしています!

マガジン

  • 旅がなくなる。|神田桂一

    3本

    インターネットやスマホ、SNSの登場により旅から失われたものをテーマにした、神田桂一さんのエッセイ連載。

  • 90年代論|佐々木敦

    7本

    90年代について考えてみたいと思います。

  • 馬場紀衣の「読書の森」

    73本

    書物の森は、つねに深いものです。林立する木々のあいだで目移りするうちに、途方に暮れてしまうことも珍しくないでしょう。新刊の若木から、自力では辿り着けない名木まで。日頃この森を渉猟しているライター・馬場紀衣さんの先導に添いながら、「読書の森」の深遠に分け入ってみませんか。

  • 三砂慶明『読書を考える旅』

    3本

    書店員として、また「読書室」の主宰として、読書の魅力を伝えることを生業としている三砂慶明さんが、「本の現場」をたずねて「読書」を探究する連載。

  • 高橋昌一郎の「視野を広げる新書」

    49本

    知的刺激に満ちた必読の新刊「新書」を選び抜いて紹介。あらゆる分野の専門家がコンパクトに仕上げた新書で、多種多彩な世界に「視野」を広げます。

ウィジェット

  • 商品画像

    イスラエルの自滅 剣によって立つ者、必ず剣によって倒される (光文社新書 1343)

    宮田 律
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    知的障害者施設 潜入記 (光文社新書 1344)

    織田 淳太郎
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    だから、お酒をやめました。 「死に至る病」5つの家族の物語 (光文社新書 1345)

    根岸 康雄
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    恐竜はすごい、鳥はもっとすごい! 低酸素が実現させた驚異の運動能力 (光文社新書)

    佐藤 拓己

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旅がなくなる。|神田桂一

インターネットやスマホ、SNSの登場により旅から失われたものをテーマにした、神田桂一さんのエッセイ連載。

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  • 3本

冒険心|神田桂一『旅がなくなる。』第3回

今の時代、グーグルマップのない世界はすべての人が想像できないだろう。歩きスマホのほとんどはグーグルマップを見ているからで間違いない。ほんの20年前までは、道に迷ったら人に聞いていたのだ。生身のコミュニケーションが必要だった。利便性と引き換えに文明の利器は、人類から生身のコミュニケーションをどんどん奪っていく。 2008年、僕はフランスに行ったあと、ついでにオランダに寄った。タリスという特急列車に乗って4時間くらいだったと思う。なぜオランダに行ったのかというと、コーヒーショッ

ハプニング|神田桂一『旅がなくなる。』第2回

インターネットやSNSの登場によって、僕たちは、誰かが、いつ、どこで、何をしているのか、容易に知ることができるようになった。 「久しぶりな感じがしないね」 友人と久しぶりに会ったとき、こんなセリフを言う機会が多くなった。 いつも、SNSで動向を見てしまっているからだ。この新鮮さの喪失は、当然ながらすべて既視のものになってしまったことに由来する。 2009年頃、僕はとある事情で会社を辞め、単身、トルコに向かっていた。予定はまったく未定。フライトチケットだけを持った旅だった。イ

偶然の出会い|神田桂一『旅がなくなる。』第1回

インターネット・スマホ・SNSの普及で本来の意味での旅は失われた。そこにあるのはただの移動にすぎない。あるいは純粋な意味での観光である。 予兆はあった。2010年代初頭からだろうか。海外のゲストハウスのラウンジで、みんなノートパソコンに向かって、一向に喋ろうとしないのである。ノートパソコンで何をしているのかというと、宿の予約、次の行き先の情報収集やメッセンジャーアプリでのチャットなどである。 本来、そういうものは、未知のものであった。未知だからこそ、刺激的であり、それが旅

90年代論|佐々木敦

90年代について考えてみたいと思います。

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  • 7本

サブカルチャーが「サブカル」になるとき|佐々木敦『90年代論』第7回

『Quick Japan』の誕生1994年9月、太田出版(芸能事務所太田プロダクションの子会社として設立された出版社です)から、ある雑誌が創刊されました。その名は『Quick Japan』。編集長の赤田祐一は飛鳥新社で若者雑誌『ポップティーン』の編集を手掛け、いわゆる謎本のはしりである『磯野家の謎』(1992年)で100万部を超える大ベストセラーを放った後、満を持して念願のサブカルチャー雑誌の創刊を企画しますが、会社からなかなかゴーサインが出ず、思い余って自費で『Quick

「ポストモダン文学」のあとで|佐々木敦『90年代論』第6回

阿部和重の登場 阿部和重は1968年、山形県の東根市神町で生まれました。上京して日本映画学校(現在の日本映画大学)で学び、卒業後も働きながらシナリオを書き続けていましたが、執筆中のシナリオが映画にするにはディテールを書き込み過ぎていることに気づき、自分はむしろ小説を書く方が向いているのではないかと思い至り、群像新人文学賞への応募をはじめ、「生ける屍の夜」というタイトルの作品で見事受賞を果たし(ちなみに三度目のトライだったそうです)、同作は『アメリカの夜』と改題されて群像の19

ポスト・ポストモダンの文学|佐々木敦『90年代論』第5回

80年代の文学 90年代の文学は、80年代とはかなり異なったものであったと言えます。デケイドは――特に日本の場合は――直前の十年間からの転換、しばしば反転を志向する(あるいは見出そうとされる)傾向があります。「もはや○○年代ではない!」ということです。文学にかんしても基本的には同じで、90年代の文学シーンには百花繚乱だった80年代とは色々な面で違った価値観や特色が求められる空気があったと思います。  80年代を代表する作家といえば、まず何といっても村上龍と村上春樹の「W村上

戦争・音楽・演劇|佐々木敦『90年代論』第4回

戦争が始まった イラン・イラク戦争(イ・イ戦争/1980年~1988年)によって軍備を飛躍的に増強させたイラクは、経済的には窮状に陥っており、原油価格の大幅下落を惹き起こしたのはOPEC(石油輸出国機構)の制限を超えて原油を過剰生産しているクウェート(とアラブ首長国連邦)だとして批判、するとクウェートはイラクにイ・イ戦争時の400億ドルの借款の返済を要請し、二国の間で一挙に緊張が高まります。1990年8月2日、イラクがクウェートに攻め入ります(クウェート侵攻)。イラクはクウェ

馬場紀衣の「読書の森」

書物の森は、つねに深いものです。林立する木々のあいだで目移りするうちに、途方に暮れてしまうことも珍しくないでしょう。新刊の若木から、自力では辿り着けない名木まで。日頃この森を渉猟しているライター・馬場紀衣さんの先導に添いながら、「読書の森」の深遠に分け入ってみませんか。

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  • 73本

世界の食卓から社会が見える|馬場紀衣の読書の森 vol.72

しばらく日本を離れていて、戻ってくると、驚かされることがいくつもある。毎回おなじことに衝撃を受けていて、慣れるということを知らない自分にもその都度、愕然としているのだけど、とにもかくにも、そうして驚かされることのひとつに、食べものがある。ほんとうに、日本人は食べることが大好きだ。世界中の美味しいものは、だいたい日本にある(と、ごくごく個人的に私は思っている)。 とはいえ、じっさいに世界へ出てみなくては分からないことのほうが多い。そして、せっかくその国の料理を食べるなら、レス

完璧主義の罠|馬場紀衣の読書の森 vol.71

理想とかけ離れた自分に腹を立てたり、達成できない目標に落ち込んだり、他の人と比べると自分は「欠けている」ように思えて、消えない不安に振りまわされている。そんなあなたは、完璧主義がもたらす罠にとらわれているかもしれない。本書は、完璧主義がもたらす影響とその心理について解説し、完璧主義が社会に急激に拡がりつつある現状を分析した、まさに現代人のための本。 私たちはいつだって現実に振りまわされている。人生は厳しく、残酷だ。現実はSNSに投稿されるような理想郷ではないし、誰かの心を傷

指揮者の仕事術|馬場紀衣の読書の森 vol.70

楽器は弾けないけれど、音楽を聴くのは好き。歌うことはしないけれど、歌を聴くのは好き。だから楽器に触らず、声も小さい私にとって、音楽は手の届かない、まさに天上のものだ。音楽を作るすべての人たちに、私は憧れずにはいられない。音楽を聴いているとき、私は音に身を任せてしまっているので、ぼーっとしている。だけど、本を読んでいる時は意識がしっかりしているので、人間には、利き手ならぬ利き耳というものがあるらしいことを、この本を読んではじめて知った。とはいえ、音楽については知らないことばかり

ヒトの原点を考える|馬場紀衣の読書の森 vol.69

人間とはなにか。人間とは動物である。動物であるとはどういうことか。この問いを、とても分かりやすく、かつ的確に説明してくれる文章がある。 このはっきりとした物言いが私はすごく好き。ひどく小さな、とるにたらない存在に思える(あるいはまるきりその反対に思うこともある)人間にたいして、著者はいちいち絶望したり、感動したりしない。人間を真っすぐに見つめ、問い、正しく理解し、そのうえで読者に説明するのに一番分かりやすい言葉を選んでいる。言葉には説得力があり、人間への愛情すら感じる。

三砂慶明『読書を考える旅』

書店員として、また「読書室」の主宰として、読書の魅力を伝えることを生業としている三砂慶明さんが、「本の現場」をたずねて「読書」を探究する連載。

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  • 3本

翻訳家・向井和美さんに「読書で人は変われるか」を尋ねたら|三砂慶明『読書を考える旅』第2回・前編

書店員として、また「読書室」の主宰として、読書の魅力を伝えることを生業としている三砂慶明さんが、「本の現場」をたずねて読書を探究する本連載(小説家・角田光代さんとの第一回はこちら)。 第二回では、翻訳家として『プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』など多数の書籍を翻訳し、『読書会という幸福』の著者でもあり、現在は受刑者向けの読書会でファシリテーターをされている向井和美さんにお話を伺いました。 ※前編・後編のうち、前編です。後編はこちら。 人はなぜ本

翻訳家・向井和美さんに「読書で人は変われるか」を尋ねたら|三砂慶明『読書を考える旅』第2回・後編

書店員として、また「読書室」の主宰として、読書の魅力を伝えることを生業としている三砂慶明さんが、「本の現場」をたずねて読書を探究する本連載(小説家・角田光代さんとの第一回はこちら)。 第二回では、翻訳家として『プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』など多数の書籍を翻訳し、『読書会という幸福』の著者でもあり、現在は受刑者向けの読書会でファシリテーターをされている向井和美さんにお話を伺いました。 ※前編・後編のうち、後編です。前編はこちら。 リアル・プ

作家・角田光代さんに「読書は人生に必要か」を尋ねたら|三砂慶明『読書を考える旅』第1回

本の声をきく、物語のはじまり 「おすすめの本を教えてください。」 「本を読みたいけど、なかなか読む時間が作れません。」 「昔は本を読んでいたけど、最近は集中力が落ちて、だんだんと読めなくなってしまって。他の人はどうやって読んでるんですか?」 「カフェや電車で本を読んでいる人に憧れます。私もスマホじゃなくて、かっこよく本が読める人になりたい。」 「小説を読んで、感動とか、癒されたりしたことないけど、これって私だけの話ですか? ほかの人からも似たようなことを聞くことありますか?

高橋昌一郎の「視野を広げる新書」

知的刺激に満ちた必読の新刊「新書」を選び抜いて紹介。あらゆる分野の専門家がコンパクトに仕上げた新書で、多種多彩な世界に「視野」を広げます。

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  • 49本

機密解除された「ゾルゲ事件」は何を意味するのか?|高橋昌一郎【第49回】

プーチンの憧れる「史上最高のスパイ」2020年10月7日、68歳の誕生日を迎えたロシアのウラジミール・プーチン大統領は、半生を振り返り、「学生の頃からゾルゲのようなスパイになりたかった」と述べている。実際にプーチンは、レニングラード大学卒業後「ソ連国家保安委員会(KGB)」に入省し、16年間にわたり東ドイツなどでスパイ活動を行った。 プーチンが憧れ「史上最高のスパイ」と呼ばれるリヒャルト・ゾルゲは、1895年10月4日、ロシア帝国カスピ海沿岸のバクー(現在は、アゼルバイジャ

私たちの排出する「ごみ」はどこへ行くのか?|高橋昌一郎【第48回】

地球環境破壊とごみ処理問題インドネシアにはアジアで最大規模の熱帯雨林があったが、近年は減少の一途を辿っている。そのため、生息地を失った「スマトラオランウータン」が「絶滅危惧種」に指定されていることを、読者はご存知だろうか。そこで、いわゆる「フェア・トレード」が開始された。私たちがインドネシア産「スマトラオランウータン・コーヒー」を購入すると、売上金の一部が、動物保護活動団体と環境に配慮した栽培を行う生産者に自動的に寄付される仕組みになっている。 というわけで、私も「スマトラ

そもそも「重力波」とは何か?|高橋昌一郎【第47回】

「重力波」検出に成功1664年、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジの学生だった21歳のアイザック・ニュートンは、窓扉に小さな穴を開けて一筋の太陽光を暗い部屋に導いた。その光線をガラスの三角柱「プリズム」に当てると、光は「虹」のように分かれ、色によって屈折する角度が異なることがわかった。彼は、これらの色彩を「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の7音階に合わせて「赤、橙、黄、緑、青、藍、紫」の7色に分類した。その「虹」を再度レンズで集めると、白色に戻る。そこで彼は「白色光は、すべて

現代日本人の「法意識」とは何か?|高橋昌一郎【第46回】

「法の支配」より「人の支配」が優先される日本2014年1月28日、理化学研究所が大掛かりな記者会見を設定し、小保方晴子氏が笹井芳樹氏と若山照彦氏と手を取り合って、STAP細胞「発見」のニュースを華々しく発表した。『ネイチャー』誌に掲載されたSTAP論文の筆頭筆者となった当時31歳の小保方氏は「リケジョの星」と呼ばれ、スター扱いされた。その後の事件の進捗は、当時『週刊新潮』に連載中のコラム「反オカルト論」で追跡したので、よく覚えている(拙著『反オカルト論』(光文社新書)参照)。